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【洒落怖】ブラック企業の果て

精神的限界を迎える男性
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ブラック企業の果て

私が勤めていたのは、典型的なブラック企業で、残業は日常茶飯事。

そんな環境の中でも、私とA君はいつも一緒に夜遅くまで働いていた。私たちは、仕事のストレスを共有しながらも、それぞれの心の余裕は次第に失われていきました。

A君の様子が変わり始めたのは、あるプロジェクトの締め切りが迫った頃からです。彼はいつもより沈黙がちになり、仕事中も遠くを見つめることが増えました。彼の変化に気づきつつも、私自身も精神的に追い詰められており、深く彼の心境を探ることができませんでした。

家路を急ぐ人

次第に、A君の発言は暗く、時には過激なものになっていきました。「この世界にはうんざりだ」「全てを投げ出してしまいたい」という言葉が、彼の口から漏れるようになりました。そして、ある日彼はついに「俺、もうこの世界やめるわ」と宣言して、そのまま姿を消しました。

A君が1週間会社に現れない日が続いたとき、私は彼の安否が心配になり、彼のアパートを訪ねることにしました。到着しても応答はなく、不安が募る中、大家さんに事情を説明しました。大家さんも最近A君の姿を見ておらず、心配そうにドアを開けてくれました。

A君の部屋に足を踏み入れると、そこは意外にも綺麗に整頓されていました。しかし、その静けさがかえって不気味さを増していました。そして、机の上に置かれていた一冊のノートが私の目を引きました。そのノートには「この世界から抜け出す方法」と題され、現実世界を離れるための奇妙な儀式が記されていました。ノートの最後には「もうすぐこの世界を離れる」と書かれており、A君の筆跡でした。

残されたノート

その瞬間、部屋の空気が一変し、冷たい風が私の背中を撫でました。窓は閉じられていたはずなのに、どこからともなく冷気が漂ってきました。大家さんもその変化に気づいたのか、「この部屋、何か変だわ…」と震える声でつぶやきました。

A君の行方について警察に連絡したものの、彼の行方についての手がかりは一切見つかりませんでした。A君が本当に「この世界から抜け出した」のか、それとも彼が抱えていた精神的な苦痛の表れだったのか、真実は闇の中に消えてしまいました。

この出来事以来、私は会社を辞め、田舎でスーパーの店員として新たな生活を始めました。スーパーの仕事は、当時とは比べ物にならないほど楽です。しかし、時折、なにか物足りなさを感じることがあります。それはおそらく、A君と共有した切磋琢磨の日々や、失われた何かへの憧憬なのかもしれません。

あの日、A君の部屋から持ち帰った一冊のノートは、今も私の机の引き出しに大切に保管されています。その中に記された「この世界から抜け出す方法」について、私は時々、A君のことを考えながら今日もページをめくっています。

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