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【怖い話|短編】宗教に狂った母

宗教に狂った母
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宗教に狂った母

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僕がまだ中学生だった頃、母が家に帰って来なくなった。

当時、父は酒屋を経営していて、裕福ではないが、家族5人仲良く暮らしていた。週末には、家族で公園に出かけたり、映画を見に行ったり。あの頃は毎日が楽しく、幸せな時間を過ごしていた。

幸せな家族

そんなある日、父が友人の借金の保証人になっていたことが原因で、酒屋は倒産してしまった。幸い、叔父の紹介で新しい仕事は見つかったものの、父の心は深く沈んでいた。そんな頃、母の様子がおかしくなり始めたんだ。

毎週土曜になると家を出て行き、夜遅くまで帰ってこなくなった。食事の支度もせず、家族との会話も減っていった。父は文句を言いながら、毎週不味いカレーを作ってくれた。今思うと、母の顔はやつれ、目は虚ろになっていった気がする。

やつれた母

父は、そんな母の変化に不満を募らせていた。ある日、父はついに母を問い詰めた。「最近どうしたんだ?夜遅くまでどこに行ってるんだ?」。母は、目を逸らし聞こえないふりをした。それを見て、父は外に聞こえるぐらい大きな声で怒鳴った。僕たち兄弟は父の怒った姿を知らなかったが、誰が悪者なのかは理解できた。母は観念したように新興宗教に入信したことを告げた。

母の告白が合図だったかのように、家族はバラバラになってしまった。かつては仲良く笑い合っていた家族は、今では互いに距離を置き、夕食時には一言も話さずに食事を済ませる。会話は、天気やニュースなど、当たり障りのない話題だけ。家の中は、重い空気に包まれていた。

それからしばらくして、家族に次々と不幸が訪れた。長女は交通事故に遭い、弟は原因不明の病に倒れた。さらに、トラックが家に突っ込むという事件まで起こった。呪われているかのように、毎日誰かが怪我をしていた。

不幸の連鎖

毎回僕は、事件が起こる度に母に伝えるのだが、母はこれらの出来事に無関心だった。「そうなんだ」とだけ口から溢れるように言うだけで、目は虚ろだった。

それとは正反対に、熱心に入信活動に励むようになっていった。

そして、母は突然家から姿を消した。

悲しむ父親

父は顔に出さなかったが、きっと辛かったのだと思う。リビングに置かれた母の置き手紙には「もう帰りません。今までお世話になりました。」と書かれていた。父は呆然と立ち尽くしていた。

翌日、父は母の寝室を調べた。見なかったほうが良かったのかも知れない。そこには不気味な祭壇が置かれていて、かつて夫婦で過ごした綺麗な真っ白な壁には奇怪な文字が書かれていた。

不気味な祭壇

床には所々に血の跡が残っていた。

父は我慢が祟ったのか、高熱を出し寝こんでしまった。僕は祖父に事情を話し、お寺の住職さんに来てもらうことにした。とてもじゃないが、不気味すぎて自分達で処理できる範囲を超えている。お清めをしてもらい、以降その部屋には誰も立ち寄っていない。

母が家を去ってから、僕たちに不幸なことは起きていない。信じたくない。母が僕たちを呪っていたなんて。

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