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【怖い話|短編】予知された地震

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予知された地震

その日、私はいつも通りの朝を迎えていた。

ところが、地元の予知能力者が「今夜、大きな地震が来る」と予言したとの噂が町中を駆け巡っていた。多くの人がその話をただの迷信と笑い飛ばしたが、私の心の中には不安が渦巻いていた。

「本当に地震が来るのかな?」私は自問自答しながら、日常の仕事に取り組もうとした。

しかし、心ここにあらずで、手につかない。

夕方、友人の大輔にその噂のことを話した。

「おい、聞いた?今夜、大地震が来るらしいぜ」と軽く口に出したが、大輔はただ笑っただけだった。

「ああ、聞いたよ。でも、そんなの信じないさ。毎日、どこかで何かが起こるって言われてるもんね」と大輔は言い、私も苦笑いでその場をやり過ごした。

しかし、日が暮れるにつれて、私の不安は増すばかりだった。家に戻り、夜の準備を始めると、突然、部屋の隅にある時計が止まった。

その瞬間、心臓の鼓動が速くなり、唾を飲み込んだ。

「こんなことも予兆の一つなのかな?」そんな思いが頭をよぎる。

夜が深まるにつれ、私はひとりでリビングに座り、緊張で身動きが取れなくなった。時計の針が予知された時間に近づくと、私は思わず息を呑んだ。

そして、その時が来た。しかし、何も起こらない。静寂が部屋を支配し、私はほっと一息ついた。

だが、その安堵も束の間、遠くで犬が鳴き、そして、地響きが始まった。

「来た…!」私は慌ててテーブルの下に身を隠した。地震は長くは続かなかったが、その後の静けさは何よりも恐ろしかった。

地震が収まった後、私は外に出てみると、町は幸い大きな被害を受けていなかった。

しかし、予知能力者の言葉が真実だったこと、そして何よりも、私たちがいかに日常の安全を当たり前に思っているかを痛感した。

後日、大輔と再び会った時、彼は真剣な表情で「あの夜は本当に怖かったな。

予知の話、もう笑えないよ」と言った。私も深くうなずき、二人でしばらく沈黙した。

この出来事は、私にとって予知能力の存在を信じるかどうか以上のものを教えてくれた。それは、未知のことへの恐れと、その恐れに立ち向かう勇気についてだった。

幽霊の話ではないが、この予知された地震の夜は、私にとって忘れられない恐怖の体験となった。

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