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【怖い話|短編】奈良の餓鬼達磨

餓鬼達磨
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奈良の餓鬼達磨

かつて、奈良県の深い山間部にある小さな村に、「餓鬼達磨」と呼ばれる呪われた達磨が伝わっていました。この達磨は、外見は普通の達磨と変わらず、赤い体に顔が描かれていますが、一度持ち主を選ぶと、その人の願いを叶える代わりに、持ち主の生命力を少しずつ吸い取っていくと言われていました。

この村では、何世代にもわたって「餓鬼達磨」の話が語り継がれてきました。伝えられるところによると、達磨は数百年前に、ある修行僧によって作られました。その僧は人々の苦しみを取り除くために、自らの強い願いを込めて達磨を作り上げたのですが、彼が予見できなかったのは、達磨が持ち主の生命力を吸い取る代償を伴うことでした。このため、達磨は呪われた存在となり、村に不幸をもたらすとされてきました。

奈良県某所の村

ある日、奈良県の山間部に住むAさんは、山で散策をしていました。その時、彼は偶然、珍しい見た目の達磨を見つけます。Aさんは、この珍しい達磨に魅了され、家に持ち帰ることにしました。

家に帰ってから、Aさんは達磨を棚の上に飾り、そのユニークな外見を楽しみました。しかし、その夜から、Aさんの家の周りで奇妙なことが起こり始めました。

最初は小さなことでした。夜中に物が勝手に動く音がしたり、家の外から誰かが中を覗いているような気配を感じたりしました。Aさんはこれらの現象を最初は気のせいだと思っていましたが、日が経つにつれて、現象はより頻繁かつ明白になっていきました。

ある夜、Aさんははっきりと達磨から声がするのを聞きました。「願いを…願いを叶えてあげる…」という声でした。その声に導かれるように、Aさんは達磨の前に座り、心の中で小さな願いをしました。

達磨

翌日、Aさんの願いは確かに叶っていましたが、同時に彼の体からは力が失われていく感覚がありました。それからというもの、Aさんは日に日に衰弱していき、何をしても体力が回復しない状態に陥りました。

近頃、外出することがめっきり減ったAさんを心配した近所のばあちゃんが訪ねてくると、Aさんは家で起きている不可解な現象を打ち明けました。それを聞いたばあちゃんはすぐに、「それは餓鬼達磨じゃないか」と気づきました。村の伝承によれば、この達磨は持ち主の生命力を吸い取り、最終的には村にまで被害を及ぼすとされていました。

ばあちゃんの助言を受け、体力が衰えていたAさんは、達磨をどう扱うべきかを村長に相談することにしました。村長はこの事態を重く見て、村の安全を守るためにも、達磨を焼き捨てる儀式を行うことを決定しました。

儀式は村の古い神社で行われ、村の人々も集まってその様子を見守りました。神職による祈祷の後、餓鬼達磨は厳かに焼き捨てられ、その煙が空に向かって静かに消えていきました。

儀式によって達磨は焼き払われた

餓鬼達磨を焼き捨てる儀式が終わり、村に平和が戻ったあと、心配したばあちゃんがAさんの様子を見に行きました。彼女がAさんの家に到着すると、静寂が辺りを包んでいました。ばあちゃんはゆっくりとドアを開け、中に入りました。

家の中は静かで、何かが終わったような、切ない空気が流れていました。ばあちゃんがAさんを見つけた時、彼はもはやこの世の人間の姿ではありませんでした。Aさんは餓鬼のような姿で、静かに息絶えていました。願いを叶えた代償として、彼の生命力は完全に消耗し尽くされていたのです。

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