【洒落怖】ドロドロのお化け

その夜、疲れ切ったサラリーマンの田中は、終電で家に帰る途中、眠ってしまいました。目を覚ますと、見知らぬ駅にいました。改札を出て、近くに宿泊できる場所を探しましたが、見つからず、仕方なくタクシーに乗り込みました。運転手は、近くにある民宿を教えてくれました。

民宿は古くて不気味な建物でしたが、田中は朝まで泊まることにしました。

田中は、その古びた民宿で、シャワーを浴びながら一日の疲れを癒していました。しかし、シャワールームから不気味なしたたり音が聞こえてきたとき、彼の平穏は崩れ去りました。そこに立っていたのは、ドロドロに溶けた姿のお化けでした。

田中は後に知ることになるのですが、このお化けはかつてこの民宿で亡くなった若い女性の霊でした。彼女は、民宿を訪れた夜、強い雨の中、外の古い井戸から水を汲みに行った際、不慮の事故で井戸に転落しました。その井戸は長年使われておらず、中にはドロドロの泥が溜まっていたのです。彼女は泥に取り込まれ、助けを求めても誰にも聞こえないまま、翌朝までに息を引き取りました。

その霊は、自身が経験した恐怖と孤独を伝えたくて、ドロドロの姿で現れたのです。田中はこの話を聞いて、お化けの存在に新たな意味を見出しました。その霊は、忘れ去られた存在ではなく、彼女の悲しみを知る者を求めていたのです。

田中はその夜、眠ることができず、夜明けとともに民宿を後にしました。彼はその後、人生における孤独や悲しみをより深く理解するようになり、亡くなった女性の霊への思いを胸に秘めて日々を過ごし始めました。