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【怖い話|短編】熱海の長い夜

熱海の長い夜
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熱海の長い夜

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先日、職場の旅行で熱海に行った際、13歳上の先輩から聞いた話です。

今から20年前、先輩は東京の八王子で一人暮らしをしていて、その家は友人たちの溜まり場になっていました。男たちが集まっても特にすることもなく、家かお店で朝まで飲むのが定番だったそうです。

ある日、そんな過ごし方に飽きた仲間の一人が「今から熱海行かね?」と提案しました。先輩たちはそのノリで車を出して熱海へと向かいました。

熱海への出発

道中の車内はテンションが上がり、目的地である熱海にはすぐに着いたそうです。

熱海に着いた先輩達は、海辺の静かな場所を見つけ、そこで夜通し飲むことにしました。夜空を見上げながら、波の音をBGMにし、夜風の心地よい空間は特別な時間でした。静かな夜に笑い声だけが響き、この時間が永遠かのように時間を忘れ楽しんでいました。

海辺での宴

しかし、夜が更けてくると突然周囲が静まり、それまでの楽しい雰囲気が一変しました。

先輩は、誰かに後ろから名前を呼ばれ振り返ったそうです。ですが、仲間は全員前にいる。熱海には知り合いもいないし、突然名前を呼ばれるはずもなく「おかしいな?」と思ったそうです。

すると、他の仲間も後ろを振り返る素振りをしています。「あれ?」っと思った先輩は全員に「なに振り返ってるの?」と聞きました。すると全員が「今うしろから名前を呼ばれた」と答えました。先輩はその瞬間ゾッとしたそうです。

不気味な声

仲間達は誰かのいたずらだろうと言っていましたが、そんな訳ないですよね。円形に陣取ってる先輩達のうしろに誰かいるわけないんですから。

その声は徐々に大きくはっきりとしてきて、相変わらず自分たちの名前を呼んでいます。その声は止みません。少しづつ少しづつ声が大きくなっていきます。

仲間の一人は顔が真っ青になり、怯え、震えながら体が冷たくなっていました。別の仲間が「これやばくね?」というと、一旦車に戻り、道中にあったコンビニに避難しようということになりました。しかし、車に戻ってエンジンをかけようとしても、一向にエンジンがかかりません。キーを回しても、エンジンは無反応。

車が動かない

不安が高まる中、その不気味な声がさらに大きく聞こえてきます。自分たちを呼ぶ声が響いていました。

ようやく夜が明け、先輩達が車から外に出ると、車のボンネットには5匹の猫の死骸が置かれていました。その日から先輩は猫が苦手になり、熱海も極力近づきたくない土地だと言っていました。

絶望的な夜明け

「今回の旅行はなぜ参加されたんですか?」と僕が先輩に聞くと、先輩は何も答えませんでした。

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