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【怖い話|短編】2025年7月、生き残るために

街を飲み込む巨大津波
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2025年7月を生き残るために

信じられないような話を聞いたので、みんなにも聞いてほしい。もちろん信じるか信じないかは、これを読んだ人に委ねようと思う。これから日本を襲う震災で、少しでも命が助かればと切に願う。

僕は現在大学3年で、首都圏の私立大に通っている。普段は授業やサークル、アルバイトに追われるいわゆる普通の大学生だ。入学してすぐ入ったサークルで一緒になったA君と意気投合し、親友となった。A君とは本当に何をするのにでも気が合った。音楽やファッション。ゲーム、漫画、本当にあらゆる事がぴたりと同じ趣向で、生まれた時からずっと一緒にいるような不思議な感覚だった。

僕の通う大学

けれど、育った環境は全然違った。A君の家族は少し変わっていて、彼が中学生の頃から両親ともに海外に住んでいるらしい。なので一人暮らしの期間が長く、同年代と比べるとしっかりしていて、まっとうに生活する力を持っていた。だからだろうか、たまに見る仕草が大人びて見えることもあった。

対して僕は、地方から首都圏にでて一人暮らしを始めた親の脛齧り。実際いまだに仕送りを貰って生活しているから、比べたら雲泥の差がある。生活力のない僕の家にA君はよく遊びに来て、親の仕送りで買った食材をA君に調理してもらうこともしょっちゅうだった。

そんなA君から先週、驚く告白をされたんだ。

「もうすぐ僕は君と会えなくなる。だから知っておいて欲しいことがある。とても大切なことだ。」とA君は言った。こんな改まった感じで話をされたことなんて、今までなかったから正直身構えた。どうしたんだろう?と。

「実は僕は、君の未来から来たんだ。未来では歴史の研究をしていて、調査の一環で半年ほど君のいる時代にお邪魔させてもらった。その調査も完了したから、もう未来に帰ることになるんだよ。」

大切な話をする友人

わけがわからなかった。3年間一緒にいた思い出がたくさんあるのに、来てから半年?頭の中がパニックになったが、彼が言うには「未来から過去に行き、調査を行う過程で生活基盤を持つ必要がある。調査は1日程度では終わらないからね。その時のためにコミュニティーに違和感なく入り込める未来のテクノロジーがあるんだ。例えば君の記憶している僕との3年間は、そのテクノロジーで改竄された記憶ってこと。実際には半年の付き合いだからね。」とのことらしい。

にわかには信じ難い話だが、彼の表情から嘘を言っているなんて微塵も感じられなかった。

僕は未来の日本がどうなっているのかA君に尋ねた。彼が語る未来の日本は、決して暗くないものだった。例えばエネルギーが完全に再生可能になり、完全な平等を実現している理想的な社会になっているみたいだ。皆が平等且つ自由な時代がゆえに、ルールに縛られる部分もあるが、犯罪でも犯さない限り何も不自由しないらしい。しかし、その未来にも避けられない災害も存在していた。

涙ぐむ友人

「半年の付き合いだったけど、僕は君にたくさん助けられた。信じて貰えるかわからない。君の記憶は、これから徐々に消えていく。けれど、覚えておいて欲しい。2025年の7月、日本に信じられない程大きな津波がやって来る。本州、太平洋沿岸の1/3までに到達する大津波は多くの人を飲み込み、信じられないほどの犠牲者が発生するんだ。僕は君に生き残って、未来を生きて欲しい。」と、うっすら涙を浮かべて僕に話した。

津波に沈む日本

僕はA君の言葉を信じるべきなのか?2025年7月、日本に本当に津波が来るのか?その時、僕は生き残ることができるのか?考えても僕には未来のことはわからない。正解は見つけられない。

徐々に記憶も薄れていくようだ。

A君。君が作ってくれた大好きなペペロンチーノの味。もう僕にはわからなくなってしまったよ。

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