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【怖い話|短編】禁断の呪術とその代償

禁断の呪術書
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禁断の呪術とその代償

その昔、私が住職を務めていたお寺の近くにある小学校でね、忘れもしない出来事があったんだ。それは、当時小学5年生の女の子がね、学校の図書館で見つけた一冊の本から始まるんだけども。その本のタイトルがさ、「禁じられた呪術」っていうんだ。

禁断の呪術書

ーー名前を聞いただけでも何かが起こりそうな予感がするタイトルだよね。

その女の子は読書が好きでね。よく図書館で本を借りては読んでいたらしいんだ。私も会ったんだけどね。あんなに可哀想なことになるなんてね。とても可愛らしい女の子だったんだけども。

話しは戻るんだけどね、彼女はその呪術書を見つけて、すぐ魅入られたように熱心に読んでいたらしいんだ。不思議なのは学校の図書にそんな本があるはずないんだよ。当然学校の履歴にもなかった。でもその本は女の子が図書室で見つけたんだよね。もうこの時点で魔に魅入られてたのかも知れないね。

その女の子はその本を見つけた夜、自宅で呪術書に書かれた儀式を試してみたらしいんだ。特にその時は何も起こらなかったようなんだけど、魔を召喚しちゃってたんだよね。彼女は。よりによって自分を媒介にしてさ。

呪術書の儀式

翌日、彼女が朝起きてきた顔をみて、母親が驚いちゃったんだよ。彼女の顔の半分がドロドロに溶けてかたまったように醜くなってしまったんだよ。とにかく病院へ電話をして症状をつたえてさ、大きな病院いったんだけど治らない。呪術書のことを聞いた母親は、それで俺のところまで話しがきたんだけどね。

魔がついてるからね。医学なんかじゃとてもじゃないけど治らないよ。

学校では窓ガラスが全部割られてたり、バスケットのゴールが不自然に曲げられてたりでさ、普通じゃありえないようなことが色々起きてた。トイレではいるはずのない人の声を聞いたり、急に肩を叩かれて後ろを振り返るけど誰もいない。一人じゃなくて全校生徒が体験してるって言うんだからそりゃ大変なことだよね。

割れた窓ガラス

肝心な女の子の方だけど、私が預かることになったんだよ。魔を取り除かなきゃなんないんだけど、それは大変な仕事だったよ。まず取り憑いた「魔」を説得して帰ってもらわなければならない。向こうからしたら「自分で呼び出しといてそりゃないだろ?」ってなるわけだよ。とてもじゃないけど交渉なんてできる相手じゃないからね。こちらがどれだけの力を持っているのか理解させるのが1番手っ取り早いんだが、私たちが死ぬまで修行しても、魔のモノには到底勝てる力なんて身につかないんだよね。

去勢を張ってさ、実力を見破られないように力を誇示していくんだ。それがどうしても時間がかかるんだね。ゆっくりゆっくりと理解させていく。そうすると今回だけはと退散してくれるんだけど、大抵がお土産を要求されるんだね。今回もお土産を取られたよ。それが、彼女の容姿だったんだ。可哀想だけど、他に手立てがなかったんだよね。

彼女の間を取り去った後は学校の方をどうにかしなきゃいけないんだけど、調べてみると原因はすぐわかったんだよ。召喚した魔とともにいくつか低級な霊がついてきちゃっててさ、それが学校で悪さしてたんだね。簡単な除霊術ですぐに症状はおさまった。

彼女はその後、引き篭もるようになっちゃったんだよね。無理もないよ。あの容姿で学校に通って勉強してって今まで通りの日常と同じように生活するっていうのは酷すぎるよね。学校でも周りから避けられ、陰で囁かれる存在となってしまったそうだ。

引き篭った少女

そしてね、呪術書の事件から一年程経った頃かな。彼女から手紙を受け取ったんだけど、その内容は、彼女の抱えていた苦悩と孤独が綴られていた。それは辛く悲しいことが沢山書かれてあったよ。

私はね、返事を書くだけでは足りないと思ってね、彼女の家まで会いに行ったんだよね。そうしたらね、その日、彼女のお通夜だったんだ。自ら命を絶ってしまったんだそうな。

魔はね、いろいろな形で私たちを試し誘惑してくる。魅入られた者の末路は残念ながら破滅にしかないんだよ。みなさんもどうか気をつけてくださいね。

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