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【洒落怖】荒れ狂う海に潜む恐怖

東北の漁村
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荒れ狂う海に潜む恐怖

これは、俺がまだ漁師になったばかりの見習いとして働いていた頃の話だ。

東北の一角にある、海に囲まれた小さな漁村でのこと。この村には、古くから伝わる言い伝えがあった。「海が荒れる夜には、漁に出てはならない」というものだ。その理由については、誰も明確には語らなかったが、村の古老たちはいつも重々しくその言葉を繰り返していた。

村の老人

しかし、その年の冬、村は厳しい経済状況に直面していた。生計を立てるため、そして家族を養うため、我々漁師たちは言い伝えを無視し、荒れ狂う海へと漁に出ることを決意した。出港する時、俺の胸には不安が渦巻いていたが、先輩漁師たちの決意に押される形で、俺もまた沈黙を守りながら船に乗り込んだ。

夜、船は激しい波に揺られ、風はまるで怪物のように船体を襲い、唸り声を上げていた。俺は作業をしながらも、心臓の鼓動が耳に響くほどに速く、不規則に打っているのを感じた。手には力が入り、息遣いは荒くなる一方だった。

その時、ふと遠く海上に不気味な光が現れた。最初は灯台の光かと思ったが、その光は不規則に動き、まるで何かが水面を滑るようにして、徐々にこちらに近づいてくる。隣で作業していた先輩漁師も、その光に気づいたらしく、俺に向かって低い声で、「おい、あれは何だ?」と尋ねてきた。俺は答えることができず、ただ見つめることしかできなかった。

その光は突如消えたが、その直後、何かが船底を強く叩く衝撃があった。全員が一斉に動きを止め、船の底から聞こえる異音に耳を傾けた。何かが船体を引きずるような音がして、船はゆっくりと不規則に回転し始めた。

荒れ狂う海

船長は緊急にエンジンを全力で動かすよう指示したが、船はまるで動かない。海底から何かに抑えつけられているかのようだった。

その時、海から突如として巨大な影が現れた。それは、人間の形をしているようでありながら、そのサイズは通常の何倍もあり、その存在感は圧倒的だった。影はゆっくりと、しかし確実に海中へと消えていった。その瞬間、俺たちは恐怖で身動き一つ取れず、唾を飲み込むことしかできなかった。

帰港後、俺たちはその夜の出来事を誰にも話さなかった。言い伝えを無視した罰だと、古老たちは冷たい目で俺たちを見ていた。それ以来、俺たちは海が荒れる夜には決して漁に出ないようにしている。あの夜見た光や影の正体について語る者はいない。真実を知る者はもはやこの世にはいないのかもしれない。あの恐怖は、俺の心の奥底に深く刻まれている。

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