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【怖い話|短編】呪いのオルゴール – 地獄の旋律 –

埃を被った古いオルゴール
目次

呪いのオルゴール – 地獄の旋律 –

薄暗い古道具屋の奥、薄ぼんやりと照らされた棚の一角で、Aさんは目を引く古いオルゴールを見つけました。それは美しい木彫りで飾られ、深い茶色の艶やかな仕上がりが、職人の技を感じさせます。オルゴールの表面は、繊細な花模様と複雑な渦巻きが彫り込まれており、どこか懐かしい雰囲気を放っていました。

蓋の開かれたオルゴール

Aさんは、そのオルゴールに強く引かれ、思わずその重厚な蓋をゆっくりと開けました。すると、オルゴールからは、ゆっくりとしたテンポで綺麗なメロディーが流れ始め、その音色はどこか遠く、古い時代から時間を越えて届いたかのように感じられました。

とても気に入り、オルゴールを自宅に持ち帰ったAさんは、その美しいメロディーに何度も耳を傾けました。しかし、夜が深まるにつれて、部屋の静けさを破るオルゴールの音色が自らの意志で響き渡り始めたとき、その音はもはや単なるメロディーではなくなり、この世のものではない何者かの叫び声のような、遠く古い時代から、あるいは別の世界から、Aさんに向けて何かを訴えかけるような、切迫したメッセージを含んでいるようでした。

そして、Aさんは夢の中で、恐ろしい光景を目の当たりにするようになります。夜ごとに訪れるのは、赤く燃える大地を背景に、悲鳴と苦痛に満ちた地獄の風景です。夢の中のAさんは、この場所が地獄であることを直感的に理解し、周りでは無数の魂が絶え間ない拷問に苦しんでいる様子を見て、深い絶望と恐怖を感じます。

夢の中の地獄

この夢は、夜が来るたびにAさんを襲い、彼女は眠ることが怖くなりました。オルゴールのメロディーが引き起こすとしか思えないこの悪夢から逃れるため、Aさんは古道具屋にオルゴールを返す決心をします。もはやその美しいメロディーに魅力を感じることはなく、ただ恐怖だけがAさんの心を支配していました。

翌日、Aさんは重い足取りで古道具屋へと向かいました。しかし昨日まであったはずの古道具屋が見つかりません。閉店ではなく、その土地に跡形もかたもなく消えているのです。

Aさんは、古道具屋があったはずの場所に立ち尽くし、混乱とショックで呆然としました。昨日まで確かに存在していたその場所は、まるで時間から削り取られたかのように、跡形もなく消え去っていました。辺りを見渡しても、古道具屋があったという証拠はどこにも見当たらず、ただ草木が生い茂る空き地だけが広がっています。

草木の生い茂る空き地

Aさんは衝動的にオルゴールを投げ捨てました。オルゴールを捨てた後、Aさんはホッとして家に帰りました。その夜は久しぶりにゆっくり眠れると思い、ベッドに入りました。でもまた、あの地獄の夢を見てしまいました。目が覚めると、息が切れていて、心臓がバクバクしていました。そして、信じられないことに、リビングのテーブルの上に、捨てたはずのオルゴールが置いてあるのを見つけました。

怖くて、泣きそうになりました。どうしてオルゴールが戻ってきたのか、全く分かりませんでした。それが自分のもとに戻ってくるなんて、オルゴールには呪われているのかも知れません。

その後Aさんがどうなったのか知る人はいません。当然、オルゴールの行方もわからないままです。もし見かけても、決してその音色を聴かないでください。その旋律を耳にしたら、もう終わりかも知れません。

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