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【怖い話|短編】伝染する夢

伝染する夢
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伝染する夢

小学4年生の時、私たちのクラスにはA君という少年がいました。彼は静かで控えめな性格の持ち主で、一人で本を読むのを好むタイプでした。体が少し弱く、生まれつきの病気を抱えていたため、活発な遊びにはあまり参加しませんでしたが、彼の優しさと知性に惹かれるクラスメイトも多く、いじめられることはありませんでした。

読書をする小学生

しかし突如、A君が学校を休むようになり、その理由がクラス中で小さな話題となりました。

A君の休みが1ヶ月、2ヶ月と長引くにつれ、欠席理由を噂するようになりました。最初は単に「体調を崩した」と囁かれていたものが、「実は入院している」という話へと変わり、時間が経つにつれて、「A君は非常に珍しい病気にかかっているらしい」という噂が流れ始めます。この噂はさらに具体的な内容へと発展し、「その病気は医学界でもほとんど例がない、特別なものだ」というものまで現れました。クラスメイトたちの間では、始めは心配の念から始まった話題が、徐々に神秘的で不思議なものへと変化していったのです。

その頃から、クラスに不思議な現象が起き始めました。

最初に話したのはBさんで、「夢の中でA君が話しかけてきた」とクラスで話しました。その夢はすごくリアルで、A君は胸を苦しそうにしながら「助けて、助けてよ。」と何度も言ってきたそうです。はじめて聞いた時はみんな、ちょっと笑っていました。でも、その後、同じような夢を見たっていう生徒が続出し始めたのです。

苦しみを訴える子供

夢がクラス中に広がっていく様子は、まるで感染症のようでした。私も当然その夢を見ました。夢の中で見たA君は、辛く悲しい顔をして横たわっていました。その姿は霧に覆われ、彼の言葉をはっきりと聞き取ることはできませんでした。

A君の疲れた表情は、今でも思い出すたびに私の胸を締め付け、苦しくなります。電車に乗っている時、お風呂に入っている時、ふと思い出すと一瞬にして心が重くなり、A君の無言の訴えかけるようなその眼差しに囚われ、涙が出てくるのです。

そしてある日のこと、A君が亡くなったという知らせがクラスに届きました。

病院で亡くなった子供

A君が亡くなった聞き、クラスは静まり返りました。クラス中に伝染していた夢が本当のことだったと全員が理解したからです。この奇妙な夢は偶然ではなく、A君の苦しい思いが思念となり、クラスの友達に助けを求めたのでしょう。

A君は当初風邪をひき、自宅で療養していましたが、発熱と同時に薬で抑えていた持病の症状が発症してしまい、救急車で運ばれたようでした。入院してまもなくは「早く治して学校に行きたい」と言っていたのですが、その病気は非常に稀で、治療が困難なものだったため、入院生活が長引くうちに彼の状態は徐々に悪化していったのです。

そして2ヶ月ほど入院が続いた頃、起き上がることも困難になっていたようです。それは、クラスで変な噂が立った頃でした。私たちクラスメイトは皆、悲しくて苦しい気持ちになりました。

彼が亡くなったことを期に、クラスメイトの間で語られていたA君の夢も突然見なくなりました。まるでA君が私たちに何かを伝えようとしていたメッセージが、彼の死とともに終わったかのように感じられました。

A君はあの夢で何を伝えたかったのか、その真意は永遠に謎のままです。あの時、私たちに出来ることは何かあったのでしょうか?それすらもわからないまま時は過ぎて行きます。私がA君のお墓に花を添えるのも今年で12回目になりました。

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