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【怖い話|短編】雨の夜に差し出された黒い傘

雨の夜に差し出された黒い傘
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雨の夜に差し出された黒い傘

これは、私の友人が体験した出来事です。彼女は嘘をつくような性格ではないので、この話を聞いたときは本当に背筋が凍りました。

その日は梅雨の真っ最中で、朝から空は厚い雲に覆われ、今にも泣き出しそうな天気でした。友人は仕事で遅くなり、夕方には激しい雨が降り始めていました。彼女は傘を持っていなかったため、家に帰るために駅から走って帰ろうとしました。

雨の夜の帰り道

雨は冷たく、彼女の服はすぐにびしょ濡れになりました。空は暗く、街灯がぼんやりと光っているだけで、人通りもほとんどなく、静まり返った通りには雨音だけが響いていました。そんな中、彼女が古びたアパートの前を通りかかったとき、不意に背後から「傘を使うかい?」という声が聞こえました。

老人との出会い

振り返ると、そこには背中を曲げた老人が立っていて、古い黒い傘を差し出していました。彼女は驚きましたが、雨に打たれながら立ち尽くしていた自分を思い、ありがたくその傘を受け取りました。老人の顔は雨でぼやけて見えませんでしたが、その手が妙に冷たく、どこか不気味な感じがしたのを覚えています。

「ありがとうございます」と礼を言って、彼女は再び家に向かって走り出しました。途中で何度か振り返りましたが、老人はすでに姿を消していました。帰宅して玄関に入ると、彼女は傘を傘立てに立てかけ、すぐにシャワーを浴びようとしました。

不気味な音と動く傘

シャワーを浴びている最中、ふいに玄関から妙な音が聞こえてきました。何かがかすかに擦れるような音で、最初は気のせいだと思っていましたが、次第にその音が大きくなり、まるで誰かが傘を開け閉めしているような音に変わっていきました。彼女は不安に駆られ、シャワーを急いで終わらせて玄関に向かいました。

玄関に到着すると、目の前であの黒い傘が勝手に開いたり閉じたりしていました。彼女は恐怖で固まりました。まるで誰かが目の前でその傘を操っているかのように見えましたが、そこには誰もいませんでした。彼女が恐る恐る近づいて傘を手に取ると、突然、傘は彼女の手の中で止まりました。その瞬間、全身に冷たい感覚が走り、彼女はその場に倒れ込んでしまいました。

彼女が意識を取り戻したのは翌朝、ソファの上でした。

翌朝の恐怖

全身に冷えが残り、昨夜の出来事が夢だったのか、それとも現実だったのか分からなくなっていました。しかし、玄関に目をやると、そこにはあの黒い傘がまだ残っていました。彼女は恐怖に震え、すぐにその傘を神社に持って行きました。神主に事情を話すと、神主は深刻な表情で傘を引き取り、何も言わずにお祓いをしてくれました。

それ以来、彼女は雨の日に外出することができなくなりました。あの時の恐怖が蘇るたびに、彼女は体が硬直してしまうと言います。

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