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【洒落怖|短編】言霊の力

言霊の力
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言霊の力

みなさんは「言霊」という言葉を聞いたことがありますか?太古の昔より、日本では言葉に魂が宿ると信じられてきました。

この古い信仰は、言葉一つ一つが持つ力を尊重し、良い言葉を選び、悪い言葉を避けることで、幸福をもたらしたり不幸を遠ざけたりするという考え方に基づいています。しかし、悲しいことに現代社会では、このような古き良き信仰が忘れ去られつつあります。

岐阜県の山奥、人里離れた場所に言葉の力、すなわち言霊を使いこなすと言われるAさんが住んでいます。Aさんが言霊の力に気づいた切っ掛けは、自身の幼少期のころの経験からだと語ります。

Aさんは控えめで大人しい子供で、6歳の時学校で同級生のいじめに遭っていました。

小学校でのいじめ

我慢の限界を迎えたある日、いじめっ子に対する怒りが頂点に達し「お前なんて車に轢かれちゃえ!」と強い感情を込めて叫んだ直後、その同級生は不慮の事故に遭い、救急車で運ばれました。

車に轢かれた子供と救急車

Aさんは驚きましたが、この時はまだ単なる偶然としか思っていませんでした。

数年後、Aさんは再び似たような経験をします。今度は、父親との口論の最中に怒りに任せて「家から出て行け!」と言った翌日、突然父親が長期の出張で家を空けることになったのです。

これらの出来事を通じて、Aさんは自分の言葉が現実に直接的な影響を与えることがあるのではないかという疑念を抱くようになりました。

そして、もう一つの決定的な出来事がAさんを変えます。ある日、深い悲しみの中で「もう会いたくない」とつぶやいた人物と、それ以降一切連絡が取れなくなったのです。このことから、Aさんは自分が特別な言霊の力を持っていることを悟ります。

言葉の重みを知ったAさんは、この力に気づいてから発する言葉に気をつけるようになりました。誰かを不用意に傷つけたりしないよう、ポジティブな言葉をなるべく選ぶ。自然と人に優しくすることを覚えたAさんは「誰かのためになりたい」と考え、ケアワーカーの道に進みました。

しかし、ケアワーカーとしての日々は、Aさんにとって予想以上に困難でした。職場でのストレス、利用者や同僚からの心無い言葉、そして何よりも自分の言霊の力をうまくコントロールすることの難しさ。言葉に込めた想いが現実になってしまうことの恐ろしさを日々感じながら、Aさんは常に自己抑制を強いられました。

特に辛かったのは、無意識のうちに発してしまう否定的な言葉が現実となってしまうこと。ある日、疲れ果ててしまい「もう耐えられない」と漏らした後、体調を崩してしまったことがありました。この出来事がきっかけとなり、Aさんは自分と周囲を守るために、人里離れた場所で生活する決意を固めます。

岐阜県山奥の家

岐阜県の山奥での生活は、孤独でありながらもAさんにとっては新たな発見の連続でした。自然の中で静かに過ごすうちに、言霊の力をより深く理解し、コントロールする方法を少しずつ見つけ出していきます。森の動物たちや植物との対話を通じて、言葉の持つ真の力とは何か、そしてその力をどのように使えば良いのかを学んでいきました。

Aさんは人知れず、言霊を使って周囲の自然や小さな生き物たちを癒やし、助けるようになります。例えば、病気の鳥を見つけたときは、優しい言葉をかけながら看護し、その鳥が元気を取り戻して飛び立つ姿を見守りました。このような経験を重ねることで、Aさんは言葉の力を肯定的に使うことの喜びを実感するようになりました。

傷ついた鳥を癒す力

Aさんの物語は、言霊という古来からの信仰が現代においても有効であり得ること、そして言葉一つ一つに宿る力の重大さを我々に思い出させます。Aさんは、言葉を通じて他者に与える影響を深く理解し、その責任を背負いながらも、その力をポジティブな形で使うことの大切さを伝えています。彼の生き方は、現代社会における言葉の使い方に対する重要な示唆を与えてくれるのです。

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