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【怖い話|短編】妖怪、ひょうすべ

妖怪、ひょうすべ
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妖怪、ひょうすべ

岡山県北部の山間にある小さな村、美作。夏の夕暮れ時、神社の境内で子どもたちの楽しそうな声が響いていた。それは、年に一度の夏祭りの夜。提灯の柔らかな光が境内を照らし、屋台の美味しそうな匂いが漂っていた。

祭りの夜

その中で、一人ぽつんとたたずむ少年がいた。ユウタ、10歳。彼は最近、村で囁かれている「ひょうすべ」の噂が気になって仕方がなかった。ひょうすべは、全身がぬめりで覆われた子どもの姿をした妖怪。人の不幸を喜び、悪戯をするという。ユウタは一人っ子で、友達も少なかったため、ひょうすべのターゲットにされるのではないかと不安を抱えていたのだ。

「ユウタ、一緒に花火見ようよ!」

幼馴染との再会

幼馴染のハナが、笑顔でユウタを誘いに来た。ハナはユウタにとって、唯一心を許せる存在だった。彼女の明るい笑顔に励まされ、ユウタも少しだけ不安を忘れた。

二人は、境内の隅にある大きな木の下に腰を下ろし、夜空に打ち上がる花火を見上げた。色とりどりの光が夜空を彩り、大きな音が辺りに響き渡る。ユウタは、ハナと一緒なら、ひょうすべも怖くないような気がした。

しかし、その瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われた。ユウタは、思わずハナの手を握りしめた。

川のほとりには、人影のようなものがぼんやりと浮かび上がっていた。それは、ぬめりのある黒い塊で、子どものような形をしていた。

ひょうすべの出現

ハナが息を呑んだ。二人は、それが何であるか、言葉にしなくても理解していた。ひょうすべだ。

ひょうすべは、ゆっくりと川から這い上がり、二人のいる方へと近づいてくる。その目は、闇夜に不気味に光っていた。

ユウタとハナは、恐怖で立ちすくんだ。ひょうすべは、ユウタに近づき、その顔を覗き込んだ。ユウタは、ひょうすべのぬめりのある肌と、生気のない目に、言葉を失った。

次の瞬間、二人は恐怖で我に返り、一目散に逃げ出した。神社の境内を、息を切らして走り続ける。後ろから、ひょうすべの気配が追ってくるような気がして、二人は何度も振り返った。

 安堵と恐怖の余韻

神社の鳥居をくぐり抜け、村の明かりが見えた時、二人はようやく安堵のため息をついた。しかし、あの不気味な姿と、得体の知れない恐怖は頭から離れない。

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