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妖怪メガネ
夏休みに祖母の家に遊びに行った僕は、屋根裏部屋で古いメガネを見つけた。それは黒縁で少し歪んでいて、レンズには細かい傷がたくさんついていた。興味本位でかけてみると、目の前の景色が少しだけ変わった。
「あれ?」
僕は目をこすってもう一度周りを見渡した。すると、庭の木の下に小さな影が動いているのが見えた。それはふわふわとした白い毛玉のような姿をしていて、大きな丸い目でこちらを見つめていた。
「もしかして、妖怪…?」
僕は恐る恐る庭に出て、毛玉に近づいてみた。毛玉は警戒する様子もなく、むしろ嬉しそうに尻尾を振っている。
「こんにちは」
僕は勇気を出して話しかけてみた。すると、毛玉は小さな声で「こんにちは」と返事をしてきた。
「君、妖怪なの?」
僕が尋ねると、毛玉は頷いた。
「僕は座敷わらし。この家の守り神だよ」
座敷わらしはそう言うと、僕の手を取って家の中を案内してくれた。普段は見えない小さな扉を開けると、そこにはお菓子や絵本がいっぱい詰まった秘密の部屋があった。
「ここは僕のお気に入りの場所なんだ」
座敷わらしは嬉しそうに笑った。
それからというもの、僕は毎日のように座敷わらしと遊んだ。座敷わらしは色々なことを教えてくれた。花の名前、星の動き、美味しいお菓子の作り方。
夏休みが終わる頃、僕は座敷わらしに別れを告げた。
「また来年も来るね」
僕はそう約束して、祖母の家に帰った。
次の夏、僕は再び祖母の家に遊びに行った。屋根裏部屋に行くと、あのメガネがまだそこにあった。僕はメガネをかけて庭に出た。
すると、座敷わらしが満面の笑みで僕を出迎えてくれた。
「おかえり!」
僕たちは、まるで昨日の続きのように、また一緒に遊び始めた。
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