13号線の白いセダン
深夜2時を回った頃、国道13号線は人気がなく、街灯だけが不気味に光を放っていた。大型トラックの運転手、田中一郎は、3時間前に福島で積み込んだ精密機器を東京へと運ぶため、睡魔と闘いながらハンドルを握っていた。ラジオから流れる深夜番組のパーソナリティの声だけが、孤独な運転を慰めていた。
しばらくすると、バックミラーに一台の白いセダンが映った。最初は気にも留めなかったが、その車は異様な速さで距離を詰め、ぴったりとトラックの後方を追走してきた。ヘッドライトはハイビームのまま、まるで獲物を狙う獣のように。
一郎は恐怖を感じ、アクセルを踏み込んだ。しかし、白いセダンもそれに合わせて加速し、車間距離は一向に縮まらない。ラジオのパーソナリティの声は、一郎の恐怖を増幅させるかのように、不気味な都市伝説の話を語り始めた。
「…深夜の高速道路で、白い車に追いかけられたという話が後を絶ちません。運転席には誰もいないとか、血まみれの女性が座っているとか…。」
一郎は背筋が凍りついた。バックミラーに映る白いセダンは、まるでラジオの話を裏付けるかのように、ますます不気味な存在感を放っていた。
次のインターチェンジで降りようと試みたが、白いセダンはそれを予測していたかのように進路を妨害し、降り口を塞いだ。一郎はパニックになりながらも、次のサービスエリアを目指すことにした。
サービスエリアに到着し、一郎は急いで車を降りた。白いセダンも一緒に停車し、距離を置いてトラックを監視している。一郎は恐怖で震えながら、サービスエリアの建物へと駆け込んだ。
店内には深夜にも関わらず、数人の客がいた。一郎は近くの席に座り、コーヒーを注文した。震える手でカップを持ち、外の白いセダンを盗み見ると、運転席には人影らしきものがぼんやりと浮かび上がっていた。
一郎は意を決して、携帯電話で警察に通報した。しかし、警察が到着する前に、白いセダンは忽然と姿を消していた。残されたのは、恐怖に震える一郎と、不可解な現象を目撃したサービスエリアの客たちだけだった。
この事件は地元のニュースでも取り上げられ、国道13号線は「白いセダンの呪い」と呼ばれるようになった。深夜の走行を避けるドライバーが増え、トラック運転手たちは白いセダンを見たら決して目を合わせないようにと、互いに注意を呼びかけるようになった。
一郎はその後、精神的なショックから運転手を辞め、白いセダンを見たという噂を聞くたびに、あの夜の恐怖を思い出しては震え上がっていた。そして、国道13号線では今も、深夜に白いセダンが現れるという奇妙な現象が報告され続けている。
コメント