【洒落怖】囁く影
3年前のことだ。新しい家に引っ越した直後から、不穏な空気を感じていた。
夜な夜な、壁の向こうから聞こえるささやき声。誰もいないはずの部屋から物音がする。はじめは、新居への慣れない緊張感だと思っていた。しかし、日が経つにつれ、その現象は異常なものだと確信するようになった。
特に深夜、家全体が静まり返る中で、耳元で囁くような声が聞こえてくる。その声は、まるで私を呼び寄せるかのように、そして、私の心の奥深くにある恐怖をかき乱す。
そんなある夜、ついに我慢の限界を超えた。
部屋の隅で震えながら、何者かに助けを求めようとスマホを手に取った。その瞬間、スマホの画面が勝手に操作され、未知の番号へと発信が始まった。電話の向こうからは、冷たく、遠く感じる声が聞こえてきた。
「逃れることはできない」と。
その声を聞いた瞬間、部屋の温度が急激に下がり、息ができなくなるほどの圧迫感が私を襲った。何かが私の存在を完全に把握し、私を狙っていることを悟った瞬間だった。
翌日、恐怖から逃れるために、地元の僧侶に相談に行くことにした。
彼は私の話を静かに聞き、深刻な表情で「これはただの幽霊ではない。あなたは何か古い呪いに巻き込まれている」と言った。彼の助けを借り、家で厳しい浄化の儀式を行った。
しかし、儀式中に家中が激しく揺れ、壁からは無数の影が這い出してきた。僧侶の読経が響く中、私はその影たちが囁く言葉を聞いた。「忘れられた記憶を掘り起こせ」と。
儀式の後、家の異常現象は一時的に収まったが、完全には終わらなかった。
僧侶は「あなた自身の中に答えがある」と言い残し、その後、姿を消した。
私は自分の過去を掘り返し、忘れ去られた古い記憶を辿り始めた。すると、家族が代々守ってきた秘密と、それを狙う古の呪いの存在を知った。その知識と共に、私は再び影との対峙を決意。
完全な解決には至らなかったが、僧侶の導きと自分の過去の理解により、影を封じ込める術を見つけ出した。
私がこの話を書き記すのは、忘れ去られた記憶と向き合い、恐怖を乗り越えた証として。
そして、同じように闇に脅かされている誰かに、希望の光を与えるためだ。影はまだそこにある。しかし、私はもう彼らに支配されることはない。
恐怖を知り、それでも立ち向かう勇気を持つこと。それが私たちが持つ最大の力だ。
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