惨劇のバスルーム
都内のマンションに住むアキは、仕事で疲れた体を癒すため、夜遅くにお風呂に入るのが日課だった。ある夜、いつものように湯船に浸かっていると、浴室の鏡に奇妙なものが映っていることに気づいた。
それは、アキ自身の姿ではなかった。鏡の中には、顔色が悪く、髪が長く伸びた女が立っていた。女はアキをじっと見つめ、口元に不気味な笑みを浮かべている。
恐怖に震えたアキは、急いで湯船から上がり、浴室の電気を消した。しかし、鏡に映った女の姿は、暗闇の中でもぼんやりと浮かび上がっていた。
(気のせいだ…)
アキは自分に言い聞かせ、寝室へと逃げ込んだ。布団にくるまり、目を閉じても、鏡に映った女の顔が脳裏に焼き付いて離れない。
翌朝、アキは恐る恐る浴室の鏡を確認した。しかし、そこにはいつもの自分の姿が映っているだけだった。
(やっぱり気のせいだったんだ…)
アキは安堵し、昨日の出来事を忘れようとした。しかし、その夜、再びお風呂に入ると、鏡に映った女の姿がアキを待っていた。
女はさらに顔色が悪くなり、目は血走り、口からは黒い液体が垂れている。アキは悲鳴を上げ、浴室から飛び出した。
それ以来、アキは鏡を見るたびに女の姿を目にするようになった。女は日に日に恐ろしい姿に変わり、アキの精神を蝕んでいく。
ある夜、アキは耐えきれなくなり、鏡に向かって叫んだ。
「出ていけ!私の前から消えて!」
すると、鏡に亀裂が走り、女の姿が歪み始めた。次の瞬間、鏡が粉々に砕け散り、女の姿は跡形もなく消え去った。
アキは安堵のため息をついた。しかし、その直後、浴室の排水口から黒い液体が溢れ出し、アキの足元を濡らした。
黒い液体はみるみるうちに浴室全体を覆い尽くし、アキの体にもまとわりついてきた。アキはもがき苦しみながらも、黒い液体に飲み込まれていく。
そして、アキの姿は二度と見られることはなかった。
アキの住んでいたマンションの浴室には、今でも割れた鏡の破片が残っているという。そして、夜遅くにお風呂に入ると、排水口から黒い液体が溢れ出し、アキの悲鳴が聞こえるという噂がある。
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