タイムカプセルと幼馴染
小学校卒業の春、私たちは何か特別なことをしようと決めた。僕と同級生8人は、校舎のはずれにある古い木の根本にタイムカプセルを埋めることにした。中には、当時の大切なもの、未来の自分への手紙、写真を詰めた。そして、20歳になったら、全員で集まって開封する約束をした。
しかし、時間が経つにつれ、その約束を心待ちにする気持ちは複雑なものに変わっていった。特に僕の心は重かった。一番仲が良かった幼馴染の智也が高校2年の夏、海での事故で亡くなってからというもの、僕の中で何かが壊れてしまったからだ。智也の亡骸は海から引き揚げられた時、その姿はもはや人の形を留めていなかった。あれから時折夢に現れる智也はいつも、その時の悲惨な姿で僕を見つめていた。
20歳の春、地元から同窓会の案内が届いた。タイムカプセルの開封の時が来たのだ。躊躇いつつも、僕はその招待に応じた。地元の仲間たちは成長した姿で一つになり、再会を喜んだが、僕の心は晴れなかった。
タイムカプセルを掘り起こすと、そこから出てきたものは、時間を超えた懐かしい品々だった。それぞれが手に取り、当時を懐かしむ中、僕は智也が入れたはずの品々に手を伸ばした。
智也の写真を一枚一枚見るたびに、僕の背筋が凍るのを感じた。写真の中の智也は全て、彼が亡くなったあの日の姿で写っていた。水浸しの服、青ざめた顔…。これは一体どういうことなのか?不安が募る中、智也の手紙を見つけた。封を開ける手が震えた。
「僕は高校生で人生を終えるので、20歳まで生きれません」と書かれていたその手紙を読んだ瞬間、全身が石のように重くなった。
その夜、帰宅後の僕の部屋には海の匂いが満ちていた。そして、窓辺には一滴の水が落ちていた。智也がまだ、何かを伝えたがっているような気がして、僕はただ震えることしかできなかった。
それからというもの、僕は智也が夢に現れるたびに、何かを示唆しているような言葉を囁かれ続けている。普通ならば忘れ去られるはずの幼い日の約束が、予期せぬ形で現実に迫ってくる。これはただの偶然なのか、それとも…。
コメント