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【怖い話|短編】緑荘206号室の怪

緑荘206号室の怪
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緑荘206号室の怪

昭和50年代。東京郊外、古びた木造アパート「緑荘」の206号室。そこは、住人が次々と失踪するいわくつきの部屋だった。

ある蒸し暑い夏の夜、管理人の木村さんは、206号室の異変に気付いた。ドアの隙間から、かすかなすすり泣く声が聞こえるのだ。それは、一週間前に引っ越してきた若い女性、川島さんの声に酷似していた。

消えた住人

木村さんは、警察に通報しようか迷った。しかし、以前にも警察を呼んだことがあったが、何も異常は見つからず、逆に変人扱いされた経験があった。意を決した木村さんは、マスターキーを手に、206号室のドアを開けた。

部屋の中は、薄暗く、湿った空気が淀んでいた。カーテンは閉め切られ、唯一の光源は、テレビの砂嵐だった。その砂嵐の中に、ぼんやりと人の顔が浮かび上がっている。それは、川島さんの顔だった。

「川島さん…?」

木村さんが声をかけると、テレビの砂嵐が激しくなり、川島さんの顔が歪み始めた。それは、まるで助けを求めるかのように、口をパクパクさせていた。

恐怖に駆られた木村さんは、部屋から逃げ出そうとした。しかし、ドアノブがびくともしない。まるで、何者かに押さえつけられているようだった。

その時、部屋の奥から、不気味な声が聞こえた。

「こっちへおいで…一緒に…楽になろう…」

声の主は、部屋の隅に置かれた古い鏡だった。鏡の中には、血まみれの着物姿の女が立っていた。その女は、長い黒髪で顔を隠し、こちらをじっと見つめていた。

鏡の中の女

木村さんは、全身の血の気が引くのを感じた。鏡の中の女は、ゆっくりと顔を上げ、恐ろしい形相を現した。それは、人間の顔とは思えないほど醜く、歪んでいた。

女は、鏡の中から這い出し、木村さんに襲いかかった。木村さんは、必死に抵抗したが、女の力は強大だった。女は、木村さんの首を絞め、鏡の中へと引きずり込んでいった。

鏡からの脱出

翌朝、206号室のドアは開いていた。しかし、部屋の中には、誰の姿もなかった。テレビは消え、砂嵐は止んでいた。ただ、一つだけ変わったことがあった。部屋の隅にあった鏡には、血まみれの掌紋が、くっきりと残されていたのだ。

呪われた部屋の真実

その後、「緑荘」は取り壊され、跡地には新しいマンションが建った。しかし、206号室の呪いは、今もなお語り継がれている。夜更けに、マンションの鏡を見ると、血まみれの着物姿の女が現れるという。そして、その女は、鏡の中から這い出し、新たな犠牲者を求めて彷徨い続けるのだ。

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