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【怖い話|短編】消えゆく夕焼け

消えゆく夕焼け
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消えゆく夕焼け

私の友人が消えてしまった、あの夏の日のことを話させてください。彼女は、村の川辺で突然姿を消しました。信じがたい話かもしれませんが、これは実際に起こったことです。

彼女は特に夕焼けが好きで、毎日のように夕方になると川辺へ散歩に出かけ、赤く染まる空を眺めるのを楽しんでいました。特に、太陽が沈む直前の空が燃えるように赤く染まる瞬間が彼女のお気に入りでした。でも、その日、「今日はなんだか夕焼けがいつもと違う気がする」と彼女が言ったとき、その言葉が何か不吉なものを感じさせました。

夕焼けの川辺

その夜、村には「夕焼けの中で人が消える」という奇妙な噂が広がりました。私も最初はそんな話を真剣に受け取っていませんでしたが、彼女がその話を聞いて心配そうにしていたのが印象に残っています。それでも、翌日の夕方、彼女はいつものように川辺に向かいました。

私もなぜかその日だけは気になって、後を追いかけて川辺に行くことにしました。川に着いたとき、空はいつも以上に異様な赤さで染まっていて、何かが違うと感じました。彼女は石段を降りて、川の水際に立っていましたが、その姿がどこか心細げに見えました。私は少し離れた場所から彼女の様子を見守っていました。

不吉な予感

突然、川の水面がまるで生き物のように揺れ動き始めたのです。彼女もその異変に気づき、足元を見下ろしました。すると、彼女の顔が恐怖で凍りついたのです。私も何が起きているのか理解できず、ただ呆然とその場に立ち尽くしていました。

彼女の足元には黒い影のようなものが現れ、彼女の足をしっかりと掴んでいました。彼女は必死に逃げようとしましたが、足がまるで地面に縛り付けられたかのように動かず、逃げ出すことができませんでした。そして、川の中からさらに無数の手が現れ、彼女を引きずり込もうとしていました。

川辺での異変

私は恐怖で体が動かず、声を出すこともできず、ただその場で見守ることしかできませんでした。彼女は何とか抵抗しようとしていましたが、その力は次第に弱まり、ついには川の中へと引き込まれていきました。最後に見た彼女の姿は、赤く染まる夕焼けを背に、必死に助けを求める彼女の姿でした。

翌日、村の人々が彼女を探しましたが、川辺に彼女の姿はありませんでした。唯一見つかったのは、彼女がいつも大事にしていた夕焼け色のスカーフが、川辺の石の上に残されていただけでした。そのスカーフは、まるで彼女がそこに座っていたかのように、風に揺れていたんです。

消えた友人と残されたスカーフ

それ以来、村の人々は夕焼け時に川辺に近づかなくなりました。その場所は「夕焼けの彼方」と呼ばれるようになり、誰もがその名を恐れるようになりました。私たちも、彼女がどこに行ってしまったのか、二度と知ることはありませんでした。ただ、あの日の夕焼けだけは、今でも忘れることができません。あの燃えるような赤さの中で、彼女が消えてしまったことを。川辺を歩くたび、あの時のことを思い出し、胸が締め付けられるような思いがします。彼女が本当にどこに行ってしまったのか、それとも何かに連れて行かれたのか、その答えは永遠にわからないままです。

村の噂は、今も生き続けています。特に夕焼けが赤く染まる日は、誰かが消えてしまうという話が今でもささやかれています。私はもう川辺に行くことはありませんが、夕焼けが赤くなるたびに、あの日の出来事が思い出されてなりません。彼女の姿が、今でもどこかで夕焼けの中に消えていくような気がしてならないのです。

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