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【怖い話|短編】賽の河原の少年

賽の河原の少年
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賽の河原の少年

大学生の私は、幼い頃から不可解な夢に悩まされていた。それは、いつも同じ場所で、同じように終わる夢だった。薄暗い賽の河原で、私は小さな男の子に手を引かれ、石を積み上げる。しかし、鬼の咆哮と共に暗闇に包まれ、私は目を覚ますのだ。

繰り返される悪夢

その夢の舞台が恐山だと知ったのは、オカルト研究サークルに入った時のことだった。恐山大祭の喧騒を避け、私は仲間たちと静まり返った霊場を訪れていた。硫黄の匂いが鼻を刺し、肌を刺すような冷たい風が吹いていた。

「ここが、夢に出てくる場所だ…」

私は、夢で見た賽の河原に立ち、鳥肌が立った。すると、背後から微かな声が聞こえた。「お兄ちゃん、手伝って…」。振り返ると、夢で見た男の子がそこに立っていた。つぎはぎだらけの服、青白い顔、虚ろな目。全てが夢と全く同じだった。

恐山での再会

「また君か…」

私は恐怖よりも、この不可解な状況を理解したいという気持ちが勝っていた。男の子は何も言わず、私の手を引いて賽の河原へと向かった。私は、まるで夢の中を歩いているかのような感覚に陥りながら、男の子と共に石を積み上げた。

すると、遠くから不気味な音が聞こえ始めた。それは、まるで地鳴りのような、鬼の咆哮のような、恐ろしい音だった。辺りはみるみるうちに暗闇に包まれ、私は再び恐怖に襲われた。

「逃げろ!」

私は男の子の手を振りほどき、夢中で逃げ出した。しかし、暗闇の中、どこへ向かえばいいのか分からず、ただひたすらに走り続けた。

翌朝、私は恐山の宿坊で目を覚ました。昨晩の出来事は、あまりにも夢と似ていたため、現実だったのか夢だったのか、判断がつかなかった。恐る恐る賽の河原へ向かうと、そこには私が昨晩積んだはずの石が、きれいに崩されていた。そして、その傍らには、小さなわらじが一つだけ落ちていた。

真実の探求

あの男の子は一体何者だったのか? なぜ私は何度も同じ夢を見るのか? そして、あのわらじは何を意味するのか? 私はこれらの疑問を抱えながら、恐山を後にした。

それから数年後、私は民俗学の研究者となり、恐山について深く調べるようになった。そして、ある古文書に、賽の河原で石を積む子どもの霊の記述を見つけた。その霊は、親に先立たれた子どもたちの無念を晴らすために、賽の河原で石を積み上げているという。

安らぎへの祈り

私は、あの男の子がその霊だったのではないかと考えるようになった。そして、あのわらじは、男の子が私との出会いを果たし、成仏できた証なのではないかと。

今でも、私はあの恐ろしい体験を忘れることができない。

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