まとめトピックスでは、現在読みたいお話しのジャンルを募集しております。ぜひともお問合せよりご連絡ください。こちらから投稿

【怖い話|短編】夏の忘れ物

夏の忘れ物
目次

夏の忘れ物

夏の盛りも過ぎ、夜の風が少し冷たさを感じるようになった頃。僕は大学の友人たちと、海辺のキャンプ場に来ていた。昼間は海水浴やバーベキューを楽しみ、夜は焚き火を囲んで語り合った。

夏の忘れ物
海辺のキャンプ場

楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付けば深夜。友人たちは疲れ果ててテントに戻り、一人焚き火を見つめていた。波の音と虫の声が静かな闇に溶け込み、どこか寂しい気持ちになった。

その時、ふと視界の端に白いものが揺れるのが見えた。目を凝らすと、それは白いワンピースを着た少女だった。長い黒髪を風になびかせ、こちらを見つめている。

白いワンピースの少女

「こんな時間に、どうしたの?」

僕は恐る恐る声をかけたが、少女は何も答えず、ただじっと見つめている。その目はどこか悲しげで、吸い込まれそうなほど深かった。

「迷子になったの?それとも…」

言葉を続けることができなかった。少女の足元には、濡れた砂浜に裸足のまま立っていた。まるで海から上がってきたばかりのように。

その時、背筋に冷たいものが走った。少女の白いワンピースは、所々に赤い染みが付いていた。それはまるで、血のように見えた。

血まみれの少女

恐怖に駆られた僕は、慌ててテントに戻ろうとした。しかし、足がすくんで動けない。振り返ると、少女は消えていた。

安堵のため息をついたのも束の間、今度はテントの中から友人の悲鳴が聞こえた。急いで中に入ると、友人の一人が震えながら指差した。そこには、テントの入り口に少女が立っていた。

「助けて…」

友人の声が震えている。少女はゆっくりと近づき、手を伸ばした。その手は、血で真っ赤に染まっていた。

僕は叫び声を上げ、目を覚ました。辺りはまだ暗く、友人たちはぐっすり眠っていた。夢だったのかと胸を撫で下ろしたが、テントの入り口には、確かに濡れた足跡が残っていた。

濡れた足跡

夏の終わりを感じさせる、あの冷たい夜の恐怖は、今も僕の記憶に深く刻まれている。そして、あの少女の悲しげな瞳と、血染めのワンピースは、決して忘れることができない。

夏の終わりは、いつも少し怖い。それは、終わりゆく夏への寂しさと、何かが終わることで始まる新たな何かへの不安が入り混じった、複雑な感情なのかもしれない。そして、あの夜の出来事は、夏の終わりがもたらす不思議な恐怖を、僕に教えてくれたのかもしれない。

Feature

特集カテゴリー

夏の忘れ物

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次