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【怖い話|短編】雨の音

雨の音
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雨の音

それは夏の終わり頃だった。

私は、忙しい日常から離れて祖母が住む山間の小さな町に一週間ほど滞在することにした。町はいつものように静かで、虫の声と風の音が心地よい場所だった。祖母の家も相変わらず古びていたが、どこか安心感を与えてくれる場所だった。

不気味な雨音の始まり

二日目の夜だった。私は布団に入りながら、静かな夜を楽しんでいた。

だが、その時、不意に外から雨の音が聞こえてきた。「今日は晴れていたはずだよな…?」と思い、窓の外を見たが、星が輝く空が広がっているだけだった。雨なんて降っていない。

なのに、耳を澄ますと確かに雨音が聞こえる。もしかして隣の家の音かもしれないと考え、そのまま眠ることにした。

次の夜も、また雨の音が聞こえた。今度はもっと近い。「おかしいな…」私は今度こそ窓を開けて外を覗いた。しかし、庭は乾いていて、地面には一滴の水もなかった。

雨音は家の中から聞こえてくるように感じたが、どこを探してもその原因は見つからなかった。

三日目の夜。私は祖母が寝静まった後、一人で居間にいた。

祖母の家は古く、木造の床は歩くたびにギシギシと音を立てる。居間の時計が深夜を知らせると同時に、またあの雨音が聞こえてきた。最初は遠くから、そして次第に、近づいてくるようだった。

さらに近づく雨音

「またか…」私は心の中でため息をつきながら音の正体を確かめようと、家の中を調べてみた。窓から外を覗いても、相変わらず晴れた夜空が広がっている。雨が降っているはずがない。なのに、確かに耳に響く水音。気味が悪い。

その時、背後から微かに「降ってきたね…」と囁く声が聞こえた。

心臓が一瞬止まったように感じ、恐る恐る振り返ったが、誰もいない。何もない。ただ、居間の片隅にある古い棚が目に入った。そこには祖母の若い頃の写真が飾られていたが、その中の一枚に目が止まった。

それは私が今まで見たことのない写真だった。

祖母と一緒に写っている知らない女性がいたが、その顔はぼやけていて、目鼻立ちがはっきりしない。奇妙な不気味さを感じた。

翌朝、私は祖母にその写真について尋ねた。「おばあちゃん、この写真に写ってる人、誰なの?」すると、祖母はしばらくの間、無言で写真を見つめていた。そしてようやく、静かに話し始めた。「あの人はね、昔この家に住んでいたの。私が若い頃、ある雨の夜に突然いなくなってしまって…それ以来、家の中で雨音がするようになったんだよ。」

私はその話を聞いてゾッとした。「いなくなったって、どういうこと?見つからなかったの?」と続けて聞くと、祖母はただ首を振るだけだった。詳しく話したくないのだろうと感じ、私はそれ以上追及するのをやめた。

その夜、私は妙な感覚を抱えながら眠りにつこうとした。だが、なかなか眠れない。頭の中には祖母の話がこびりつき、心が落ち着かなかった。深夜になり、再びあの雨音が耳に届いた。「またか…」と思いながらも、私は布団の中でじっとしていた。しかし、今夜は何かが違った。雨音がどんどん大きくなり、まるで頭のすぐ上で雨が降っているように感じたのだ。

我慢できずに起き上がり、居間に向かった。居間のドアを開けると、そこには水たまりが広がっていた。「なんで…?雨なんて降ってないのに…」と思った瞬間、足元が冷たく感じた。私は足を引き、もう一度部屋を見回した。誰もいない。だけど、確かに濡れている。

その瞬間、祖母の話が頭をよぎった。「まさか…」と思い、急いで窓を閉め、部屋に戻った。だが、雨音は止まらなかった。むしろ、家の中に響くようにさらに大きくなった。私は布団をかぶり、必死に耳を塞いだ。心臓がバクバクと音を立て、全身が冷たく感じた。

翌朝、私は祖母に話をしようとしたが、言葉が出なかった。

祖母は私の顔を見るなり、ただ静かに微笑んだ。そしてこう言った。「あの雨の音、聞こえたんだね…」

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