SNSと口裂け女
現代の東京、SNSの波が静かな夜にも押し寄せる。街は新たな都市伝説に囁かれ、その中心には「口裂け女」がいた。しかし、この口裂け女は従来の話とは異なり、SNSを通じて獲物を探す現代の化身である。
大学に通うA君は、その日バイトが休みで家でゆっくりしていた。
夜更けに、A君のスマートフォンが振動した。送信者は大学の友人B君。
「今、ちょっと外に出られる?」
それと一緒に添付されていたのは、見知らぬ女性の写真だった。マスクで口元は見えないが、その瞳は直接カメラを見つめ、不思議な魅力を放っていた。彼女の目は何かを語りかけるようで、その神秘的な輝きはA君を一瞬で魅了した。
「紹介してくれるつもりなのか?」でも、なぜこんな夜中に?疑問が頭をよぎるが、好奇心が勝ったA君は、約束の場所へと向かうことにした。
公園に向かうA君。
到着すると、公園は深夜の静寂と冷たい風に包まれていた。B君の姿はどこにも見えず、公園の入口近くの灯りの下で例の女性が一人で立っていた。
彼女は平均より少し高い身長で、女性らしい曲線を描くシルエットが、遠くからでもはっきりと見える。彼女の長い髪は夜風になびき、月明かりに照らされ妖しさを放っている。とても魅力的な女性だと誰もが一目で思うだろう。
女性は顔の半分をマスクで隠したまま、ゆっくりとA君に歩み寄ってくる。
「私、きれい?」
と彼女が静かに問いかけたとき、A君の心臓は激しく打ち始めた。彼女がマスクを外した瞬間、A君は息をのんだ。彼女の口は耳まで裂けており、その異常に大きな口からは、人を飲み込みそうな不気味な笑みがこぼれていました。その瞬間、彼女の存在が一変し、魅力的な人物から恐怖の源へと変貌したのだ。
心の中で、B君がもはやこの世に存在しないだろうと予感した。彼女の口から漏れる声を聞きながら、A君は逃げ出したいという衝動に駆られたが、同時に、自分の足がその場から動かせないことに気づく。恐怖が彼の意志を縛り付け、動けない足と凍りついた心が、彼をこの場に釘付けにしている。
「どうしたら…」
A君の頭の中は、この絶望的な状況から逃れる方法を探す思考でいっぱい。しかし、彼女の存在はあまりにも圧倒的で、逃走する方法が見当たらない。彼は自分が口裂け女の伝説に直面していること、そしてこれがただの噂話ではなく、現実の恐怖であることを痛感した。A君にできることは、この恐怖にどう立ち向かうかを考え、何とかこの場から逃れる策を見つけ出すことだけだった。
彼女が一歩づつ近づいてくる。
スマートフォンを取り出し「私を否定した人たち」と言いながら、悪意あるコメントを残した人々のアカウントを次々に示した。そのリストの中には、驚くべきことにB君のアカウントも含まれいた。
A君がその後どうなったのかは不明だ。
このような現代版口裂け女の話はSNS上で急速に広がり、新たな形の都市伝説として若者たちの間で語り継がれた。彼女はオンラインとオフラインの境界を越え新たな恐怖を産み落としている。この物語は、デジタル時代における新しいタイプの恐怖を提示し、SNSの匿名性が引き起こす影響と、現代における都市伝説の形がどのように進化しているかを象徴している。
あなたも見知らぬ人との出会いには少し慎重になった方が良いかも知れない。
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