夢の中の影
これから話すことは、誰にも信じてもらえないかもしれないけれど、これは本当に私が体験したことです。これを読んだあなたがどう感じるかはわかりませんが、私はどうしてもこの話を誰かに伝えなければならない気がしています。
その夜、私はいつも通りベッドに入りました。最近、仕事のストレスがたまっていたせいか、眠りに落ちるまでに時間がかかっていたのですが、その日はすぐに眠りに落ちました。夢の中で、私は知らない商店街を歩いていました。夕方のような薄暗い空、どこか懐かしいようでいて不気味な雰囲気が漂う場所でした。私はなぜかその商店街を歩くことに焦りを感じていて、周りの店の看板や通りの様子を一生懸命に覚えようとしていました。
ふと、目の前に小さな神社が現れました。古びた鳥居が入り口を守り、境内には誰もいないようでした。石段には苔が生え、長い間誰にも手入れされていないことがわかりました。私はなぜかその神社に引き寄せられるように足を踏み入れました。すると、神社の奥から薄暗い人影が現れ、私に向かってゆっくりと歩み寄ってきました。恐怖で体が動かなくなり、その影が近づいてくるのをただ見ているしかありませんでした。影は近づくと、声なき声で「あなたはもう戻れない」と囁いたのです。
その瞬間、私はハッと目を覚ましました。心臓が激しく鼓動し、汗で全身がびっしょりでした。
ただの悪夢だ、そう思おうとしましたが、あまりにもリアルで、現実と区別がつかないほどでした。なんとか気を落ち着けようとしながら、私は朝の準備を進めました。
その日は友人たちとカフェでランチをする約束をしていました。気分転換になると思い、家を出ました。目的地に向かう途中、私はふと夢の中で見た光景と同じような商店街に迷い込んでしまいました。その瞬間、全身に冷たいものが走り、足が止まりました。見覚えのある通り、夢の中で見た看板、そして、夢で歩いたあの道――まさかと思いながらも、私はその道を進んでしまいました。
そして、そこには本当に夢の中で見た古びた神社がありました。心臓が激しく鼓動し、耳鳴りがする中、私は神社の前で立ち止まりました。現実感が失われ、夢と現実が交錯しているような感覚に襲われました。怖くて逃げ出したい気持ちを押さえつけながら、私は神社の境内に足を踏み入れてしまったのです。
夢の中と同じように、境内は荒れ果て、苔むした石段がありました。そして、再びあの人影が現れました。影はゆっくりと私に近づき、その時、私はようやく気づいたのです――あの影は、私自身の影だったのです。
影は地面に広がり、私の足元を捉えました。逃げようとしても足が動かず、影は次第に私の体全体を包み込んでいきました。恐怖で叫び声を上げましたが、誰も助けに来るわけがありませんでした。最後に見たのは、影が私を完全に覆い尽くす瞬間でした。
気づいた時には、私は神社の境内に倒れていました。起き上がると、あの影はどこにも見当たらず、私の体も無事でした。けれど、それ以来、私はあの商店街に近づくことができなくなりました。そして、今もその夢が現実となる恐怖に苛まれています。どうか、私の話を信じてください。これはただの夢ではなく、私が実際に体験したことなのです。
コメント