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【怖い話|短編】月に隠された影

月に隠された影
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月に隠された影

十五夜の夜、私は地元の伝統行事に参加するため、久しぶりに実家へ帰りました。小さな村で行われるこの行事は、家族や親戚が集まり、秋の収穫を感謝するものですが、実際はただ月を眺めながらお酒を飲む程度のものです。子どもの頃から慣れ親しんだ光景に懐かしさを覚えつつも、どこか違和感を感じていました。

祖父の警告

それは、祖父母から聞かされた「本当の十五夜の秘密」についてのことです。彼らは決して外では話さず、家の中で小さな声で話していました。曰く、十五夜の夜には決して他人に見せてはいけない何かがあり、それを破ると「呪い」が降りかかるというのです。私は子ども心に怖がっていましたが、結局大人たちの冗談だろうと信じていませんでした。

しかし、今年は何かが違いました。祖父が突然、今年の十五夜は「気をつけろ」と真剣な顔で私に警告したのです。「月を見すぎるな。何かが見えるかもしれん」と。

その言葉が頭に引っかかりながらも、私は夜になると、外に出て月を眺めました。美しい満月が空に浮かんでおり、村全体がその光に照らされているのは幻想的でした。周りには家族や親戚たちが和やかに語り合っていましたが、私はどうしても祖父の言葉が気になって、ふと一人で少し離れた場所に歩いて行きました。

十五夜の美しい風景

静かな田んぼのあぜ道を歩きながら、私は再び月を見上げました。すると、不意に何かが視界の端に入りました。遠くに、白い人影のようなものが動いているのです。最初は気のせいだと思い、目をこすりましたが、それは次第に近づいてきました。

その人影は明らかに人間の形をしていましたが、顔は見えません。ただ、こちらに向かってゆっくりと歩いてきているのです。私は足がすくんで動けませんでした。月の光が異様に明るく、周囲が不自然に静かでした。音が消えたかのような静寂の中で、その影がすぐ近くまで来ると、私ははっきりと見ました。

田んぼでの遭遇

それは、祖父だったのです。

驚きと混乱が一瞬頭を支配しました。祖父は家の中にいるはずなのに、どうしてここに? しかし、目の前にいるのは確かに祖父の姿。でも、何かが違いました。顔の表情がまるで無感情で、目も虚ろでした。

「月を見てはいけない…」祖父の声が耳元でささやかれ、私はその瞬間、後ろを振り返りました。しかし、振り向いた瞬間には何もなく、ただの暗い田んぼが広がっているだけでした。

家に戻ると、祖父は何事もなかったかのように家の中に座っており、誰も私が体験したことを信じませんでした。

家に戻った後の静けさ

それから私は十五夜の夜、決して月をじっと見つめることはなくなりました。何かが見えてしまうかもしれないからです。そして、あの夜から、月を見るたびに祖父の無表情な顔が頭に浮かび、決して消えることはありません。

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