まとめトピックスでは、現在読みたいお話しのジャンルを募集しております。ぜひともお問合せよりご連絡ください。こちらから投稿

【怖い話|短編】404号室

404号室
目次

404号室

夏の終わりの蒸し暑い夜、ビジネスマンの田中は、福岡での重要な商談のため、羽田空港から飛び立った。急な出張だったため、ホテルの予約が取れず、現地で探すしかない状況に、家族からは呆れ顔で見送られた。

出張に向かう男性

福岡空港に到着し、博多駅周辺のホテルを何軒か回ったが、どこも満室だった。諦めかけたその時、駅から少し離れたビジネスホテルに一部屋だけ空きがあることがわかった。薄汚れた外観と古びた内装に一瞬ためらいを感じたが、背に腹は代えられない。田中は404号室の鍵を受け取り、急いで商談に向かった。

商談は無事に成功し、安堵した田中はホテルに戻った。シャワーを浴びてベッドに横になると、すぐに深い眠りに落ちた。

寝る男性

真夜中、田中は異様な暑さで目を覚ました。部屋の中は熱気に包まれ、息苦しさを感じた。薄目を開けると、窓の外はオレンジ色の光で埋め尽くされていた。飛び起きてカーテンを開けると、信じられない光景が広がっていた。ホテル全体が炎に包まれ、窓の外はまさに火の海だった。

「火事だ!」

田中は叫び、急いでハンカチで口を覆い、財布だけを掴んで部屋を飛び出した。廊下に出て非常階段を目指すが、熱風と煙で視界が遮られ、方向感覚を失いそうになる。

火災発生

エレベーターホールの前を通り過ぎようとした時、田中は思わず足を止めた。そこには、全身が焼けただれた男が倒れていた。男は苦痛に顔を歪め、助けを求めるように手を伸ばしてきた。

「助けてくれ…お願いだ…」

助けを求める男

男の皮膚は溶け始め、見るも無残な姿に変わり果てていた。田中は恐怖で身動きが取れず、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

「お願いだ…助けてくれ…」

男の声が耳元で響き、その手が田中の足首を掴んだ瞬間、田中は叫び声を上げて目を覚ました。

悪夢を見た男性

「夢か…」

全身汗だくの田中は、激しく動悸していた。時計を見ると、まだ午前3時だった。夢の余韻が残る中、田中はホテルのフロントに電話をかけ、火災報知器が誤作動したのか確認した。しかし、フロント係はそんな事実はなく、ホテルは至って平穏だと答えた。

不気味な夢に不安を感じた田中は、ホテルの従業員にこのホテルの歴史について尋ねてみた。すると、従業員は少し戸惑った様子で、このホテルはかつて火災で全焼したホテルの跡地に建てられたことを教えてくれた。

ホテルのフロント

そして、火災で犠牲になった人々の中には、焼け跡から発見されなかった者もいるという噂があることも…。

田中は言葉を失った。あの夢は、単なる悪夢ではなかったのかもしれない。404号室の宿泊客だった男の霊が、今もこのホテルを彷徨っているのだろうか。

新幹線

田中は恐怖に震えながら、夜明けを待った。そして、一刻も早くこのホテルから出たい一心で、チェックアウトを済ませると、始発の新幹線で東京へと戻った。

Feature

特集カテゴリー

404号室

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次