赤い月の夢
子供の頃、僕たちは“赤い月の夢”の噂に怯えていた。それは、真紅の月が夜空を不気味に照らす夢を見た者は、地獄に堕ちるという恐ろしい都市伝説だった。
僕たちは、その話を半分本気にしながら、夜眠りにつくたびに赤い月が現れないよう祈っていた。
時は過ぎ、大人になった僕は、そんな子供じみた話をすっかり忘れていた。仕事に追われる日々の中で、赤い月の夢を見ることも、地獄に堕ちる恐怖を感じることもなかった。
しかし、ある満月の夜、悪夢が僕を襲った。暗闇の中、巨大な赤い月が空を覆い尽くし、不気味な光が辺りを赤く染め上げる。夢の中で僕は恐怖に震え、逃げ惑う。しかし、赤い月は執拗に僕を追いかけ、その光は次第に強さを増していく。
目を覚ました僕は、冷や汗でびっしょりだった。心臓は激しく鼓動し、呼吸は乱れている。あの悪夢は、紛れもなく“赤い月の夢”だった。
「まさか、あの都市伝説が本当だったのか…?」
僕は恐怖に震えながら、ベッドから這い出す。窓の外を見ると、満月が煌々と輝いている。しかし、それは悪夢のような赤ではなく、いつものように青白い光を放っていた。
「夢でよかった…」
僕は安堵のため息をつく。しかし、心の奥底には拭いきれない不安が残っていた。あの都市伝説は、単なる子供たちの作り話ではなかったのかもしれない。
次の日、僕はインターネットで“赤い月の夢”について調べてみた。すると、驚くべき情報が目に飛び込んできた。
「赤い月の夢を見た者は、数日以内に不可解な死を遂げる」
それは、都市伝説とは異なる新たな噂だった。僕は背筋に冷たいものが走るのを 느꼈다. そして、あの悪夢が再び僕を襲うのではないかという恐怖に怯えるようになった。
数日が過ぎ、僕は次第に精神的に追い詰められていった。仕事も手に付かず、食欲もなくなっていく。そして、ある夜、再び悪夢が僕を襲った。
巨大な赤い月が空を覆い尽くし、不気味な光が辺りを赤く染め上げる。僕は恐怖に震えながら、逃げ惑う。しかし、赤い月は執拗に僕を追いかけ、その光は次第に強さを増していく。
「もうダメだ…」
僕は絶望の中で目を閉じた。そして、次の瞬間、激しい衝撃と共に意識が途絶えた。
病院のベッドで目を覚ました僕は、自分が交通事故に遭ったことを知った。幸いにも命に別状はなかったが、あの悪夢を見た日から数日後の出来事だった。
「やはり、あの都市伝説は本当だったのか…」
僕は呟く。そして、あの赤い月が再び僕を地獄へと誘うのではないかと、恐怖に怯えながら生きていくことになった。
コメント