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【怖い話|短編】予兆

予兆
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予兆

これは、私がまだ学生だったころの話です。夏の終わりごろ、友人と遅くまで遊んでいた帰り道で起きた出来事です。

普段なら自転車で帰るところを、その日は友人と歩いて駅まで行ったため、夜遅く一人で歩いて家に帰ることになりました。田舎の小さな集落で、道にはほとんど街灯がなく、真っ暗な夜道が広がっていましたが、私はこの道を何度も通っていたので特に恐怖を感じることもありませんでした。

帰り道の静寂

その夜、気温は比較的涼しく、虫の鳴き声が聞こえてくる静かな夜でした。私は少し疲れていたので、早く家に帰って休みたいという気持ちだけで、淡々と足を進めていました。道は一本道で、両側には広がる田んぼがあり、夜は人影一つありません。

私の頭の中では、友人と過ごした楽しい時間の余韻が残っていて、特に不安を感じることもなく、歩いていたのです。

しかし、しばらく歩いているうちに、突然周囲の音が消えたことに気が付きました。

さっきまで聞こえていた虫の鳴き声や、風に揺れる草木の音が、まるで世界から消えてしまったかのように一瞬にして静まり返ったのです。私は歩く速度を少し落とし、周りを見渡しました。暗闇が広がる中、特に何か異常があるわけではないように見えましたが、その静けさが不気味で仕方がありませんでした。

私は少し不安を感じながらも、「気のせいだ」と自分に言い聞かせて、再び歩き始めました。

影の出現

しかし、その不安感はすぐに恐怖に変わりました。視界の端に、何か動くものが映ったのです。私は一瞬立ち止まり、その方向に目を向けました。

畑の中に、何か人のような影が見えました。

最初はその形がよくわからず、ただのかかしだろうかと思いました。しかし、よく見るとその影はかかしのように棒立ちではなく、私の方をじっと見つめているように感じられました。背筋に寒気が走り、その場で足が動かなくなりました。

その影は、普通の人の姿とは明らかに異なっていました。異様に背が高く、まるで首が不自然に長いかのように、頭が歪んでいるように見えました。そして、何よりも恐ろしかったのは、その影が少しずつこちらに近づいてきていることでした。

足音は全く聞こえず、ただじわじわと距離を詰めてくるような感じがしたのです。

私は一気に恐怖心に襲われ、反射的に背を向けて走り出しました。

逃走

心臓が激しく鼓動し、足が地面を踏むたびに響く自分の息遣いが耳元にこだまします。振り返ることはできませんでした。あの影が私を追いかけてきているかどうか確認する勇気は全くなく、ただひたすら家に向かって全力で走りました。

家までの道のりはいつもよりも長く感じましたが、何とか家にたどり着き、玄関のドアを閉めると同時にその場に座り込みました。

家への帰還

全身が震えていましたが、周囲を見渡しても何も追ってきているものはいませんでした。ホッとしたものの、まだ心臓がバクバクと鳴り続け、恐怖は完全には消えませんでした。

次の日、私は友人にこの話をしました。

友人は私が言う影の話を聞いて驚きながらも、「そういえば、あの辺りは何か出るって噂があるらしい」と言い出しました。私は初めてその噂を耳にしました。友人によると、何年か前にあの場所で事故が起こり、そこに現れる影はその時に亡くなった人の霊だと言われているとのことでした。

噂と影の正体

私自身は霊を信じているわけではありませんが、あの夜見たものが何だったのか、今でも説明がつきません。

それ以来、私はその道を夜遅くに通るのを避けるようにしています。あの静寂と影の存在を思い出すだけで、今でも背筋が凍るような感覚に襲われるからです。

あの影が追いかけてこなかったのは幸運だったのかもしれませんが、もう二度とあんな経験はしたくないと思っています。

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