山奥の古家で起こる怪奇現象
昔からその家には、不可解な現象が起こると言われていました。
台所の蛇口から、まるで誰かがいたずらをするかのように、ぽたぽたと水が垂れるのです。家族は何度も修理を試みましたが、その音は決して止まりませんでした。その夜もまた、家の主である老人は、深夜の静寂を破る、台所からのぽたぽたという水の音に悩まされていました。
不快感を抱きつつも、老人はその謎を解明するために立ち上がりました。重い足取りで台所へと向かう彼の心拍数は、不安と恐怖で次第に高まっていきました。台所にたどり着くと、蛇口からの水滴音がより一層はっきりと聞こえてきました。
そして、彼が蛇口を凝視していると、突如として現れたのは、「水滴小僧(みずたまりこぞう)」と呼ばれる妖怪でした。水滴小僧は、その家に棲む者たちの不安や恐怖を感じ取り、それを自らの力に変えるため、夜な夜な蛇口から水を垂らし続けていたのです。
水滴小僧は、静かながらも不気味な声で語り始めました。
「私はこの家の空気を濁らせ、あなたたちの恐怖を集めている。あなたたちの不安が、私をこの世に留めているのだ」と。老人はその言葉に恐怖を感じつつも、奇妙な興味を覚えました。なぜこの妖怪は、家族の不安を集めるのか。その疑問が彼の心を占めていきました。
しかし、水滴小僧は老人の疑問に答えることなく、再び蛇口の隙間へと消えていきました。ぽたぽたという音は止まることがなく、老人はその不気味な現象と共に生きていくことを受け入れざるを得ませんでした。
以来、家族は夜な夜な台所から聞こえる水の音に耳を塞ぎながら眠りにつくようになりました。そして、その家の近くを通る人々も、ぽたぽたと水が垂れる音を聞くたびに、水滴小僧の存在を恐れるようになりました。
この話は村中に広まり、夜中に台所で水が垂れる音がする家は、水滴小僧が住み着いていると噂されるようになりました。
人々はその音を恐れ、同時に、この世にはまだ解明されていない不思議な現象が存在することを認識するようになりました。水滴小僧の話は、ただの都市伝説ではなく、何世代にもわたって語り継がれる恐ろしい真実として、村の歴史の一部となっていきました。
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