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【怖い話|短編】山道

山道
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山道

大学の友人3人と、夏休みにドライブに出かけた日のことです。目的地は山奥にある景色が美しいと評判の場所。カーナビを頼りに進んでいましたが、だんだんと周囲には民家や店が見当たらなくなり、代わりに木々が生い茂るばかり。昼間とはいえ、あまり人の気配がしない山道に不安がよぎりました。

山道を進む友人たち

「これ、本当に合ってるのか?」助手席にいた友人Aが、ナビを睨みつつ言いました。
「合ってるよ、少し遠回りなだけみたいだ」と運転していた友人Bが答えますが、彼の声にも自信がないのがわかります。

山道をしばらく走ると、ナビが突然「目的地に到着しました」と告げました。しかし、周囲を見渡しても特に目立ったものはなく、ただ山の中腹に広がる木々と古びた石畳だけが目に入ります。

「え?ここが目的地?冗談だろ?」とAが不満げに言い、私も「おかしいな、もう少し行けば何かあるんじゃないか?」と声をかけました。しかし、Bは「ナビはここだって言ってるんだから、ちょっと車を降りて歩いてみよう」と言い出しました。仕方なく、私たちは車を降りて辺りを探索することにしました。

荒れた鳥居の発見

数分歩くと、目の前に突然古びた鳥居が現れました。苔むした石段の上に立つ鳥居は、長い間放置されていたようで、草や蔓が絡まっています。「ここ、神社かな?でもずいぶん荒れてるな」と私は独り言のように言いました。

「何か気味悪くねぇか?」とAが言うと、Bは「こういう場所、意外とパワースポットかもな」と笑いながら言いました。正直、私も不安を感じていましたが、Bが平気そうに振る舞うので、気にしないことにしました。

しかし、急にAが「俺、ここあんまり好きじゃない。帰ろうぜ」と口調を強めました。彼があまりに真剣な顔をしていたので、私たちはそのまま車に戻ることにしました。鳥居を背にして戻ろうとしたその時、何か背中を押されるような感覚があり、全員が無言で車に向かって急ぎ足になりました。

「なんだよ、さっきの感じ…」私は息を切らしながらつぶやきましたが、誰も何も答えません。車に戻ると、Bがすぐにエンジンをかけようとしました。しかし、何度試してもエンジンがかかりません。「おい、冗談だろ?」とBがイラついたように鍵を回し続けましたが、車はうんともすんとも言わない。

車の故障と友人の異変

「これ、やばくないか?誰か助け呼べよ!」Aが焦った声で言いましたが、この辺りには電波も届いていないようでした。「くそ、どうすんだよ…」とBが苛立ちながら頭を抱えたその時、突然Aが不気味な声で笑い出しました。

「な、なんだよA、お前どうしたんだよ!」私は驚き、彼の顔を覗き込みましたが、その表情は普段のAとはまるで違っていました。顔が引きつり、目がどこか虚ろで、口元は不自然に歪んでいました。「帰りたくないんだろ?」Aは低く冷たい声で言い放ちました。

全員が凍りつきました。さっきまで怖がっていたAが、突然こんなことを言い出すなんて考えられません。「おい、冗談はやめろって。どうかしてるぞ!」Bが声を荒げましたが、Aは笑い続けました。彼のその笑顔が、どんどん恐ろしいものに見えてきました。

「…とにかく、ここから出よう」私はBと一緒にAを引きずるように車から降り、山道を歩き始めました。Aは抵抗するように体を重くしていて、その力が異常に感じられました。「こんな力、Aが出せるわけがない…」そう思いつつも、必死で引っ張りながら山道を下り続けました。

どれだけ歩いたのか、気がつけば山の入り口に差し掛かり、周囲の景色が少しずつ開けてきました。すると突然、Aはふっと力を抜き、元に戻ったかのように「おい、なんで俺、こんなところにいるんだ?」と困惑した表情で言いました。

山道を下りる途中での解放

私は何も言えず、ただ息を切らしていました。Bも混乱した様子で「…帰ろう」とだけ言い、そのまま足早に車に戻りました。幸いにも、車は山を下りるとすぐにエンジンがかかりました。しかし、あの日のことは、私たちはそれ以来誰も口にすることがありません。

ただ、あの出来事の翌日、Aは高熱を出し、2週間も入院しました。病院では病名が特定できず、医者も首をかしげるばかり。それ以来、私たちはその山道に決して近づかないようにしています。

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