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【怖い話|短編】真夏の夜のプール

真夏の夜のプール
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真夏の夜のプール

真夏の夜の帳が下りた頃、高校生のカイト、マコト、ユウキの3人は、懐中電灯の明かりだけを頼りに、とある小学校のプールへと続く道を歩いていた。蝉の声が遠くに聞こえ、湿気を帯びた風が彼らの頬を撫でる。

目指すプールは、彼らの通う高校から自転車で15分ほどの場所にあった。夏休みに入り、浮かれた気分の高校生たちが集まる繁華街とは反対方向、静寂に包まれた住宅街の中にひっそりと佇んでいる。

忍び込み

プールのフェンスは、錆びついて所々塗装が剥がれていた。カイトが慣れた手つきでフェンスを乗り越え、マコトとユウキもそれに続いた。

プールの水は、昼間の熱気を帯びたままで、生ぬるく、そして静寂に包まれていた。プールの底には、落ち葉や虫の死骸が沈んでおり、懐中電灯の光に照らされて不気味な影を浮かび上がらせている。

ユウキは少し怯えた様子で、周囲をキョロキョロと見回した。

「なあ、こんなことして、本当に大丈夫かな?」

カイトはユウキの肩をポンと叩き、自信満々に答えた。

「大丈夫だって!誰も来ないって。それに、こんなスリル、なかなか味わえないだろ?」

マコトは何も言わず、ただ静かに水面を見つめていた。

プールサイド

カイトがプールサイドに腰を下ろし、靴下を脱ぎ始めた。ユウキもそれに倣う。マコトは少し遅れて、2人の後を追った。

3人はプールサイドに足を投げ出し、しばらく夜空を見上げていた。満天の星々が、漆黒のキャンバスに宝石のように散りばめられている。都会の喧騒を離れ、この静かな場所で過ごす時間は、彼らにとって特別な意味を持っていた。

意を決したように、カイトがプールに飛び込んだ。続いてユウキも。マコトは少し遅れて、2人の後を追った。

水しぶきが上がり、3人の笑い声が静かな夜に響き渡る。彼らはプールの中を自由に泳ぎ回り、時折水鉄砲で水を掛け合い、じゃれ合った。それは、彼らだけの秘密の王国であり、束の間の自由を謳歌する楽園だった。

しかし、その楽しい時間は、突然終わりを迎えた。

マコトが悲鳴を上げたのだ。「足、足が…」

水中の恐怖

カイトとユウキは、マコトの叫び声に驚き、慌ててマコトの方へ泳ぎ寄る。マコトの顔は恐怖に歪み、目は大きく見開かれていた。

「何かが…足首を掴んでる…」

カイトとユウキは、マコトの足元を必死に探ったが、何も見つからない。懐中電灯の光を水中に当てても、ただ水が濁って何も見えない。しかし、マコトはなおも叫び続けている。

「離してくれ!お願いだ、離してくれ!」

3人はパニックになり、プールから這い上がるようにして飛び出した。息を切らしながら、プールを振り返る。

逃走

水面は、さっきまでの静けさを取り戻していた。まるで、何もなかったかのように。

しかし、3人は確かに感じたのだ。あの冷たい感触を、底知れぬ恐怖を。それは、夏の夜の幻想だったのか、それとも…。

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