離島の人魚伝説
沖縄の離島でダイビングを楽しんでいた女性、由美は、恐ろしい体験をすることになる。彼女は幼い頃から海に親しみ、ダイビングインストラクターとして働いていた。
しかし、地元に古くから伝わる人魚伝説を聞いてから、海の底に潜ることに恐怖を感じるようになった。
ある満月の夜、彼女は友人たちとナイトダイビングに出かけ、島の周辺で潜ることにした。月明かりに照らされたサンゴ礁や、夜行性の魚たちの不思議な生態を楽しみながら、彼女は徐々に深く潜っていった。すると、不意に彼女の足首に冷たい手が触れる感覚があった。
振り返ると、そこには美しい人魚の姿があった。だが、その美しさとは裏腹に、人魚の目は虚ろで、顔には生気がなかった。人魚は彼女に微笑みかけ、手招きをした。その手は、人間のものとは異なり、水かきがあり、鱗に覆われていた。由美は恐怖を感じながらも、人魚に吸い寄せられるようについていくことにした。
人魚は彼女を深い海の底へと導いた。そこは、昼間とは全く異なる不気味な世界だった。色とりどりのサンゴは黒ずんでおり、魚たちは影のように静かに漂っていた。そして、海底の洞窟の奥に、人魚は彼女を誘い込んだ。
洞窟の中は、不気味な静寂に包まれていた。人魚はそこで、ゆっくりと振り返り、由美を見た。すると、その美しい顔はみるみるうちに歪み、鋭い牙を剥き出しにした。人魚は、人間を捕らえては、その魂を喰らう恐ろしい海の魔物だったのだ。
由美は恐怖で身動きが取れなくなった。人魚は、ゆっくりと彼女に近づき、手を伸ばした。その瞬間、由美は、まるで全身の血が凍りつくような感覚を覚えた。
しかし、次の瞬間、彼女の体は突然、強い力で水面へと引き上げられた。必死で水面に顔を出すと、そこにはダイビング仲間の顔が浮かんでいた。彼らは、由美の異変に気づき、救助に来てくれたのだ。
恐怖で震える由美は、仲間たちに助けられ、何とか島に戻ることができた。しかし、あの夜の体験は、彼女の心に深い傷を残した。彼女は二度と海に潜ることはなくなり、人魚の姿を見るたびに、あの恐ろしい顔が脳裏に焼き付いて離れなくなった。
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