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【怖い話|短編】視力を奪うカルテ

視力を奪うカルテ
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視力を奪うカルテ

青森県のとある山深い場所に、ひっそりと佇む廃墟。それは、かつて「奥羽サナトリウム」と呼ばれた結核療養所の残骸だった。深い森に囲まれたその場所は、半世紀以上前に閉鎖され、今では地元の人々に「呪われた病院」として恐れられている。

視力を奪うカルテ
廃墟への誘い

病院の最上階、ひときわ古びた病棟が存在した。そこには、患者のカルテや治療記録、医師たちの個人的な日記、そして実験の映像記録が厳重に保管されていた。それらの記録は、読む者の精神を蝕み、最悪の場合、視力を奪うほどの衝撃的な内容を含んでいた。それは、人体実験、新薬の治験、そして当時はまだ一般的でなかった外科手術の記録だった。

ある霧深い夜、心霊スポット巡りをしていた若者たちが、廃墟となった療養所へと足を踏み入れた。彼らは、最上階の閉鎖された病棟を発見し、好奇心に駆られて中へと足を踏み入れた。軋む床、剥がれ落ちた壁紙、そして不気味な静けさ。彼らは、懐中電灯の光を頼りに奥へと進んでいった。

禁断の病棟

病棟の奥には、無数の書類が山積みになった部屋があった。埃まみれのカルテ、変色した写真、そして古びた映像テープ。彼らは、その中から一冊のカルテを手に取った。それは、ある男性の患者に関する記録だった。

カルテには、男性の壮絶な闘病生活が綴られていた。彼は、若くして結核に侵され、家族や友人から隔離されたこの療養所に送られた。そして、効果が未知数な新薬の投与や、当時はまだ発展途上だった外科手術を受け、心身ともに衰弱していった。カルテを読み進めるうちに、彼らの心は次第に重くなっていく。男性の孤独、苦痛、そして死への恐怖が、彼らの心に深く刻まれていく。

呪われたカルテ

そして、ついに異変が起こった。彼らの視界がぼやけ始め、激しい頭痛に襲われた。彼らは、恐怖に駆られながらも、カルテを読み続けることを止められなかった。まるで、何かに取り憑かれたように。

数時間後、彼らは病棟からよろめきながら出てきた。彼らの目はうつろで、言葉を発することもできなかった。そして、数日後、彼らの視力は完全に失われてしまった。

視界の喪失

この事件は、地元で大きな話題となり、療養所の噂はさらに広まった。人々は、閉鎖された病棟の記録を「呪われたカルテ」と呼び、二度と近づこうとはしなかった。

しかし、それでもなお、好奇心旺盛な者たちが、廃墟へと足を踏み入れる。彼らは、呪われたカルテの力を知らずに、あるいは知りながらも、その禁断の知識を求めて最上階へと登っていく。そして、彼らの多くは、二度と地上に戻ってくることはなかった。

奥羽サナトリウムの廃墟は、今もなお、閉ざされた病棟の記録とともに、静かに森の中に佇んでいる。それは、人間の弱さと医療の闇を映し出す鏡であり、同時に、好奇心と知識欲がもたらす恐ろしさを警告する存在でもある。そして、その呪いは、これからも人々を恐怖に陥れ、視力を奪い続けるだろう。

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