【洒落怖】深夜の最終列車
深夜、僕はいつものように仕事を終え、人気のない駅へと足を運んだ。
この時間、駅はほとんど人がいない。
ホームにたどり着くと、ひんやりとした空気が肌を撫でた。僕はベンチに座り、息を大きく吸い込んだ。深夜の静寂が、なぜか心地よい。しかし、今夜は何かが違った。遠くで列車が近づく音が聞こえる中、僕はふと、隣に誰かの存在を感じた。振り向くと、そこには誰もいない。
ただ、不思議と安心することはできなかった。息を潜めて辺りを見渡すと、再びその感覚が襲ってきた。
数分後、最終列車が到着した。
ドアが開き、僕は車内に一歩踏み入れると、その瞬間、冷たい風が体を貫いた。列車内は空いていて、僕は窓際の席に座った。車内の灯りがチカチカと揺れる中、僕はふと、対面の席に座る人影に気づいた。しかし、よく見るとそこには誰もいない。
息を呑んでその場所を見つめると、何かがぼんやりと見えたかと思うと、すぐに消えてしまった。僕の心臓は激しく打ち、呼吸は荒くなる一方だった。そして、その瞬間、列車は激しく揺れ、全ての灯りが消えた。
真っ暗闇の中、僕は恐怖で身動き一つできなかった。そして、耳元で囁くような声が聞こえてきた。
「帰りたい…」その声は、悲しみに満ちていた。
僕は必死になって周りを見渡そうとしたが、真っ暗で何も見えない。僕の呼吸は、恐怖で一層速くなり、心臓の鼓動だけが唯一の音だった。列車が次の駅に到着すると、突然、灯りが戻り、周りを見渡すと、僕以外に乗客は誰もいなかった。息を切らしながら、僕はその駅で降りた。
駅を出ると、夜風が僕の顔を撫でた。
振り返ると、列車は静かにその場を離れていった。僕は深夜の駅を後にし、家路についた。しかし、その夜から、僕の心には消えない何かが残った。あの声の主は誰だったのか、なぜ僕に囁いたのか。その理由はわからない。ただ、あの深夜の最終列車で何かが僕に訴えかけてきたことだけは確かだった。
息を整えながら、僕はただ、あの夜のことを思い出すたびに、ふとした寂しさを感じるのだった。
コメント