知りたい情報、売ります
ミナは一年前に失踪した彼氏、ケンを必死に探していた。
ケンは、冒険を求めて海外放浪の旅に出たが、出発から3ヶ月が経過した頃、突如として彼からの連絡が途絶えた。友人たちは「きっと現地で新しい出会いがあったのだろう」と軽く見ていたが、ミナにはそうは思えなかった。なぜなら、ケンの両親からも、彼の消息について全く連絡がないと聞かされていたからだ。
ケンの両親は、息子が消息不明になって以来、深い不安と苦悩の日々を過ごしていた。彼らはケンが旅立つ時、息子の自立を信じ、心から支援していた。しかし、連絡が途絶えた後、彼らは様々な手段を尽くして息子の安否を確認しようとしたが、どれも実りはなかった。
ケンの携帯電話は常に電源が切れており、ソーシャルメディアのアカウントも更新されていない。彼の両親は地元の警察に届け出を行い、また、ケンが最後に訪れたとされる国の大使館にも問い合わせたが、手がかりは一つも得られなかった。
そんな折、ミナはインターネットで「ミッドナイト・アプリ」という、何でも手に入ると噂される闇オークションの存在を知る。行方不明のケンの手がかりをこのアプリで得られるかもしれないと思い立ち、ミナは参加を決意した。
アプリを通じてアクセスしたオークションには、想像を絶するような品々が出品されていた。
世界中の失われたとされる絵画や彫刻、存在すら知られていない最新鋭の科学技術、絶滅したとされる生物や、未確認生物(UMA)の生きた標本や、そのDNAサンプル。政府や有名人の秘密、未公開のスキャンダル、古代文明の秘密に関する文書やデータなど多種多様。金額はどこかの国の国家予算並みだった。
その中に、「あなたの知りたい情報」という出品物を見つける。料金はASKとされており、躊躇しながらもミナは購入ボタンを押した。金額は驚くべきことに0円。しかし、その後は何の進展もなく、情報を得ることはできなかった。「冷やかしに違いない」と失望しながら、その日は眠りについた。
数日後、ミナ宛に一つの荷物が届く。送り主の名前はなく、何の前触れもない謎の小包だった。ドキドキしながら箱を開けると、その中にはホルマリンに浸された脳みそが入っていた。吐き気を催しながらも、ミナはその脳みそをじっと見つめた。
そして、付属していた一枚の紙には「あなたが求めた情報」と書かれていた。
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