【洒落怖】私には前世の記憶がある
前世の記憶を持つことは、多くの人が憧れる超常現象の一つかもしれない。
しかし、私にとってそれは憧れではなく、日常を翻弄する恐怖の源だった。私は前世の家族――父親、母親、姉、そして私を殺した相手までをはっきりと覚えている。この現世でも彼らと再会してしまったのだ。
私の前世は平凡な家庭での生活だった。愛する家族に囲まれ、幸せな日々を送っていた。しかし、その幸せは突如として終わりを告げる。家族を惨殺し、最後に私に手をかけたのは、当時の親友だった。
現世での私は、結婚し子供にも恵まれた。しかし、前世の記憶が甦った時、私の心は平穏を失った。特に、前世での家族と瓜二つの妻や子供たちを見るたび、深い罪悪感に苛まれる。彼らを守れなかった無力さが、今も私を苦しめている。
ある日、その親友と思われる人物に現世で偶然再会した。彼は私を見ても何も感じていないようだったが、私には彼の瞳の奥に潜む闇が見え隠れしていた。私は恐れ、同時にこの輪廻からの解放を求めていた。
「あなたは、私を覚えていますか?」私が勇気を出して尋ねた時、彼は一瞬だけ表情を曇らせたがすぐに笑顔を取り戻した。
「すみません、あなたを見間違えたようですね。」彼はそう言って去っていった。しかし、その夜から奇妙な出来事が起こり始めた。
夜な夜な、前世の家族の幻が私の前に現れるようになった。彼らは私に何かを伝えようとしているようだったが、その声は聞き取れない。そして、ある夜、私を殺した親友の幻も現れた。彼は冷たい笑みを浮かべながら、私に近づいてきた。
「逃れられない。永遠に繋がっているんだ。」彼の声が響くと、私は深い絶望感に襲われた。
その後、私は家族を守るため、そして自分自身を解放するために、様々な方法を試みた。霊能者に相談し、前世の因縁を断ち切る儀式にも参加した。
時間が経つにつれ、幻覚は少しずつ薄れていった。しかし、完全に消えることはない。私は常に、前世の影に追われる恐怖と共に生きている。
この体験を通して、私は人生における因果と縁の深さを痛感した。前世の記憶は、私にとって恐怖でありながらも、大切な家族を守るための警鐘となっている。
もう二度と、前世の悲劇を繰り返さないように、私は現世の家族を深く愛し、守り続けることを誓う。
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