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【洒落怖】ギャーギャー

【洒落怖】ギャーギャー

夏の暮れ、私は母方の田舎、西日本の静かな村を訪れていた。

その日も、夕方の涼しい風を求めて、ひとりで田んぼの畦道を歩いていた。空はオレンジ色に染まり、田んぼは金色に輝いて美しかった。

突然、ギャーギャーという赤ん坊の泣き声が、近くの茂みから聞こえてきた。

周囲を見渡しても、人の姿はなく、声だけが静かな田園に響いていた。

不安に駆られながらも、私はその声を背にして家へと足を早めた。家に着くまでの道のりは、何故かいつもより長く感じられた。

家に到着すると、私はその不思議な体験を母と祖母に話した。「田んぼの方で、赤ん坊の泣き声が聞こえたんだけど…」と言い終えると、祖母の顔色が変わった。

「それは…昔からの言い伝えがあるのよ」と祖母が静かに言った。

「この村では、夕暮れ時に赤ん坊の泣き声が聞こえたら、それには近づかないこと。そして、そのことを他人に話した者は、不幸な目に遭うと言われているの」

私の心臓は急に重くなった。

祖母の言葉は、ただの迷信だと思いたかったが、どうしてもその声の出所が気になって仕方がなかった。

「でも、なんでそんなことになるの?」と私が尋ねると、母が口を開いた。

「誰もその理由は知らないわ。ただ、昔から伝わる忠告を守ることで、私たちは何世代にもわたって平和に暮らしてきたの。だから、不必要にその話を掘り返さないことね」

その夜、私はなかなか眠れなかった。

窓の外を見ると、月が明るく照らしているが、どこかで聞こえた赤ん坊の泣き声が頭から離れなかった。しかし、それ以上に恐ろしかったのは、その声にまつわる不吉な言い伝えだった。

翌朝、私は村の他の住人にその話を聞こうとは思わなかった。祖母の言葉を思い出し、不安を胸に秘めたまま、その夏の休みを過ごした。

その後、私は何度も田舎を訪れたが、あの日以来、夕暮れ時には絶対に外に出ないようにしている。

そして、あの不思議な泣き声を聞いたこと、そしてそれにまつわる言い伝えを、誰にも話さないよう心がけている。

あの夏の日、私はただの迷信ではない何かを感じ取ったのだから。

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