【洒落怖】忘れられたアパート
大学生の私は、安い家賃に惹かれて、ある古びたアパートに引っ越しました。人里離れたその場所は、学生には不人気でしたが、私には静かで落ち着く場所でした。
引っ越して数日後、私は夜中に奇妙な音に気付きました。廊下を歩くような足音、壁を叩く音…。初めは、古い建物特有のものだと軽視していましたが、日に日にその音は明確で、不気味さを増していきました。
「またか…」と思いつつ、ある夜、その音に耳を澄ませました。その音は、まるで私を呼ぶようで、恐怖を感じました。勇気を出して廊下に出てみると、そこには誰もいませんでした。しかし、隣の部屋のドアに「空室」と書かれた札が…。あれ?前は「入居中」だったはず。
次の日、管理人にその部屋のことを尋ねたところ、彼は露骨に動揺し、「あの部屋はもう何年も誰も住んでいない」と言いました。私の言葉に彼はさらに青ざめ、「あれは単なる間違いだ」と言いましたが、その声には確信がありませんでした。
それ以降、私はあのアパートでの夜が恐ろしく、早々に引っ越しました。今でも、あの夜の音が耳に残り、思い出すだけで身震いします。あの音は一体何だったのか?誰かが本当にいたのか、それとも…?その答えは、今でも謎のままです。
引っ越し後も、あのアパートでの出来事は私の心に影を落とし続けていました。私は何が真実なのか、自分自身で確かめるために再びアパートを訪れることにしました。日中に行けば、恐怖は少し和らぐだろうと思ったからです。
アパートに戻ると、何も変わっていないように見えましたが、明るい日差しの中でも、あの夜の出来事が頭から離れませんでした。隣の部屋の前に立ち、深呼吸をしてからドアをノックしました。しかし、返事はありませんでした。
管理人の部屋に行くと、彼は驚いた表情を浮かべました。「あの部屋には近づかない方がいい」と彼は忠告しましたが、私は真実を知りたかった。彼は渋々、その部屋の過去について話し始めました。
何年か前、その部屋に住んでいた家族が突然消えたというのです。家具や私物はそのまま残され、まるで彼らが突然消えたかのように。以来、その部屋には不可解な現象が起こると噂されていたそうです。
管理人の話を聞いて、私の背筋が凍るようでした。あの夜の音が、もしかすると消えた家族のものだったのかもしれない。私は急いでその場を後にしましたが、その後もあのアパートのことが頭から離れませんでした。
その出来事から数年が経ちましたが、今でも時々、夜中に遠くで聞こえる足音や壁を叩く音を思い出します。あれは一体何だったのか、答えは見つからないままです。ただ、私にとっては忘れられない、恐ろしい記憶となって残っています。
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