【洒落怖】蔵の禁書
薄暗い蔵の奥で、埃まみれの古文書を見つけた。それは、見たこともない文字で書かれており、何やら奇妙な図形が描かれていた。
好奇心と探求心に駆られた私は、古文書を手に取り解読を試みた。数日かけてようやく、書かれていた術式の意味を理解することができた。
それは、死者を呼び出すための術式だった。
私は、恐ろしさを感じながらも同時に好奇心を抑えることができなかった。本当に死者を呼び出すことができるのだろうか?
夜になると、私は古文書に書かれていた指示通り儀式を行った。暗い部屋で、ロウソクを灯し、呪文を唱えた。
すると、部屋の空気が急に重くなった。そして私の背後から冷たい風が吹いてきた。
振り返ると、そこには人の形をした影が立っていた。影はゆっくりと私の方へ近づいてくる。
私は恐怖で声も出なかった。ただ、その異様な光景を呆然と見つめることしかできなかった。
影は私の目の前に立ち止まった。そしてかすれた声でこう言った。
「なぜ、私を呼び出したのか?」
その声は、どこか懐かしい響きを持っていた。
私は、震えながら、こう答えた。
「あなたに会いたかったからです。」
影は、私の言葉を聞いて、静かに微笑んだ。
「ありがとう。」
そして、影はゆっくりと消えていった。
私はしばらくの間、呆然と立ち尽くしていた。恐怖と驚きで体が震え止まらない。
ようやく私は部屋を出た。夜の街は私には異様に明るく、恐ろしく感じられた。
私は家へと走り部屋に閉じこもった。そして、布団にくるまって目を閉じた。
しかし、あの影の顔は頭から離れない。
あの影は、誰だったのか?何者だったのか?
蔵で見つけた古文書に書かれていた術式は、本当に死者を呼び出すことができたのだろうか?
今でも私には分からない。
ただ、あの夜の恐怖は一生忘れることはないだろう。
後日談
蔵で見つけた古文書を処分しようと決意した。再びあの恐ろしい体験を味わいたくなかったからだ。
古文書を燃やそうとしたとき、私はふと一文が目に入った。それは、術式の禁忌について書かれていた。
「この術式は、一度使用すると、二度と元には戻れない。」
私は、その一文を読んで、背筋が冷えた。あの夜、私は禁忌を犯してしまったのだ。
私は、古文書を燃やすことができなかった。もし、古文書を燃やしたらあの影は永遠に私の魂に取り憑いてしまうのだろうか?
古文書は、今も私の部屋の奥に隠されている。私は、その存在を恐れると同時にどこか惹かれてしまう。
あの夜、私は何を見たのか?何をしてしまったのか?
その答えは、おそらく永遠に分からないだろう。
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