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【怖い話|短編】足跡

足跡
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足跡

数年前、一人暮らしを始めたばかりの頃に体験した出来事を今でもはっきり覚えています。

当時、仕事の都合で引っ越した先は、築浅のアパート。綺麗で便利な場所にあり、初めての一人暮らしということもあって、私は新生活に期待で胸を膨らませていました。

引っ越してから数日間は、何も問題なく順調でした。仕事から帰ってきては、新しい家具や生活に馴染むのが楽しく、夜もぐっすり眠れていました。

新築アパートでの一人暮らしの始まり

しかし、引っ越ししてからちょうど一週間が過ぎたあたりでしょうか、夜中に奇妙な音が聞こえるようになったのです。それは、夜中の1時や2時頃に、廊下からかすかに聞こえる足音でした。

最初は外の音かと思い、アパートの住人が夜中に出入りしているのだろうと、特に気にしませんでした。

ところが、足音は毎晩決まった時間になると聞こえてくるのです。ドンドンと重い足音ではなく、スッスッと軽い足音。まるで誰かがスリッパを引きずるような音でした。

気になって、一度窓を開けて外を確認したことがありますが、アパートの廊下には誰もいませんでした。

夜中に聞こえる不気味な足音

「まあ、気のせいだろう」と自分に言い聞かせ、寝ることにしましたが、その夜もまた足音は聞こえ続けました。

ある夜、我慢できずに玄関のドアを少しだけ開けて廊下を覗きました。だれかが歩いている気配はまるでなし。しかし、足音ははっきりと自分の部屋の中から聞こえるのです。

その時、背中にぞっとする寒気を感じました。音の正体が何なのか、急に怖くなりましたが、確認しないわけにはいかないと、自分を奮い立たせて、部屋中を確認しました。ベッドの下、クローゼット、浴室、トイレ、どこを見ても何も異常はありません。それでも足音だけは続いています。

私の心臓はドキドキと激しく鼓動し、手汗がじっとりと出ていました。

「何かの気のせいだ、きっと疲れているんだ」と、心の中で自分に言い聞かせながらベッドに戻りましたが、眠れるはずもありませんでした。布団の中で耳を澄ませると、足音は徐々に私の近くに寄ってきているような気がします。今度ははっきりと、それが誰かの足音だと確信しました。

その翌日、昼間に友人に相談してみました。

「それ、もしかして幽霊なんじゃない?」と半ば冗談交じりに返されましたが、内心では少し納得してしまいました。私はあまり霊的なことを信じる方ではありませんが、その足音には説明がつかないことが多すぎたのです。

そして、決定的な出来事が起こったのは、その翌日の夜でした。

仕事から帰ってきた私は、いつものように部屋に入り、靴を脱いで玄関マットに立ちました。ふと下を見ると、そこに濡れた足跡が残っているのです。自分が出したものではありません。部屋に誰もいないはずなのに、明らかに人の足跡が残っている。その瞬間、全身に鳥肌が立ち、私は一歩も動けなくなりました。

濡れた足跡の発見

「まさか…誰かが入っている?」と思い、部屋の中を確認しようとしましたが、どうしても足が動きません。頭の中で「このまま逃げるべきだ」と思いながらも、何かに支配されているかのようにその場に立ち尽くしていました。そして、再び聞こえてきたのです。

あの足音が、私のすぐ後ろから。

「もう、だめだ…」と心の中で絶望し、振り返ることすらできませんでした。冷や汗が背中を伝うのを感じ、震えながら玄関に座り込みました。

翌朝、気づくと私は玄関マットの上でうずくまって寝ていました。

昨夜の足跡は、すっかり乾いて消えていましたが、あの恐怖は決して忘れることができません。それ以来、あの足音は二度と聞こえなくなりましたが、私はアパートを引き払うことを決意し、すぐに引っ越しました。

恐怖が現実になる

今でも思い出すたび、背筋が凍りつくような思いです。あの時、振り返らずに本当によかったのかもしれません。もしかしたら、後ろには…本当に何かがいたのかもしれない。

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