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【怖い話|短編】暗闇の人影

暗闇の人影
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暗闇の人影

私たちが引っ越す前に住んでいた家は、古くて広い庭を持つ一軒家でした。

幼い頃からそこに住んでいたため、家族みんなにとって特別な場所でしたが、ある時期から妙なことが増え始めました。夜になると、家の奥からかすかな足音や、風がないのに庭の木々が不自然に揺れることが増えたのです。

家と異変の始まり

最初に異変に気づいたのは妹でした。彼女はよく「誰かがいる」と言い始め、夜になると怯えるようになりました。私たちは、子供の空想かと思い、あまり気にしていませんでした。

しかし、ある晩、事件が起きました。

その夜、私はリビングでテレビを見ていたのですが、急に妹の悲鳴が聞こえました。慌てて妹の部屋へ駆けつけると、彼女は窓の方をじっと見つめ、震えていました。顔は蒼白で、汗がびっしょりと出ていました。

「どうしたの?」と声をかけても、妹は一言も発しません。ただ、指を窓の方に向けて震えながら、「そこに…」とだけ呟きました。

妹の恐怖体験

恐る恐る窓の外を見ました。

最初は何も見えないと思いましたが、次第に視界に入ってきたのは、黒い影のような何かが庭に立っているのです。それは、人の形をしているものの、顔や体の詳細がまったく見えません。

ただ、じっとこちらを見つめているのだけがはっきりとわかりました。

その瞬間、全身が凍りつくような感覚に襲われ、言葉を失いました。妹も同じものを見ていたのでしょう。彼女は再び悲鳴を上げ、そのまま気を失ってしまいました。

主人公の目撃

家族は大慌てで妹を病院に連れて行きましたが、彼女はその後、話すことができなくなり、まるで別人のようになってしまいました。

医者の診断は「自閉症」。

しかし、私たち家族は知っていました。あの夜、妹が見た何かが、彼女の心を壊してしまったのだと。

その出来事がきっかけで、私たちはすぐに引っ越すことを決めました。

家を出る直前、もう一度あの窓から庭を見たのですが、黒い影はもう見えませんでした。それでも、今でも私ははっきり覚えています。あの影が、何をするでもなく、ただこちらを見つめていた恐怖を。

引っ越してからも、妹はあの夜のことを一度も話すことはありません。

引っ越しとその後

私も二度とその話を口にすることはありませんでしたが、心のどこかでは、いつかまたあの影が現れるのではないかという不安が消えないのです。

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