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【怖い話】蝕む音 Part 1

蝕む音
目次

蝕む音 Part 1

音の正体

新しい生活が始まるという期待に胸を膨らませて、私はこの家に引っ越してきた。

引っ越しと新しい家

周囲は静かな住宅街で、古びた家だが広さも申し分なく、家の前には手入れの行き届いた庭が広がっている。この家は長い間、誰も住んでいなかったらしく、内装は多少傷んでいるものの、リフォームされている部分もあり、住むには十分な状態だった。

引っ越し業者が荷物を運び入れている間、私は家の中を歩き回り、これからの新しい生活に思いを巡らせていた。

家の中は少し薄暗く、特に昼間でも光が入りにくい廊下は何とも言えない雰囲気が漂っていた。しかし、それがこの家の「古さ」からくるものであると理解していたため、私は特に気に留めなかった。むしろ、どこか懐かしささえ感じるその空間に、心地よさすら覚えた。

引っ越し作業を終えたその夜、私は疲れ切っていた。ベッドに横たわると、あっという間に眠りに落ちた。しかし、その深い眠りは突然の異音で破られることとなった。

最初の異変

夜中、まだ暗闇が支配する時刻、かすかな「カサカサ」という音が聞こえてきた。最初は風の音か、外で動物が走り回っているのだろうと思い、そのまま無視しようとした。しかし、音は一向に収まらない。むしろ、どんどん大きくなっていくように感じた。

私は目を開けて耳を澄ました。その音は確かに家の中から聞こえてくる。最初はベッドの脇から聞こえているように感じたが、すぐに壁の向こう側、いや、まるで家全体を這い回っているような不規則な音に変わっていった。

「何だろう?」私は起き上がって音の発生源を探そうとしたが、音の出所がはっきりしない。まるで家自体がその音を立てているように思えた。

家全体を覆う異音

「気のせいだろう」と自分に言い聞かせ、その夜はなんとか眠りについた。だが、その異音は翌日も鳴り響き続けた。

次の日、私は家の中を徹底的に調べることにした。床下、天井裏、そして壁の隙間まで可能な限りチェックしたが、何一つ異常は見当たらない。それでも音は断続的に続いていた。

しかも、音の強さは日増しに増していき、夜中になると特に大きく、そして不気味に響くのだ。寝室の壁を伝うようにして、音が私の頭の中に直接響き渡る感覚に襲われた。

その音は、ただの古い家が立てる軋みの音とは異なっていた。何かが意図的に音を立てているような、そんな感じがしてならない。特に夜、家が静まり返った時にだけその音は激しくなる。「カサカサ」「ゴソゴソ」何かが這い回る音。

その正体を掴もうと音を追うが、音は私を翻弄するかのように場所を変え続けるのだった。

日中はそれほど気にならないが、夜になると恐怖心が増していく。私は次第に眠ることができなくなり、疲れと不安が積み重なっていった。友人に相談しようかとも考えたが、そんな漠然とした不安をどう説明すればいいのかもわからない。結局、誰にも話すことなく一人でその音と向き合い続けるしかなかった。

ある日、音の正体が気になって仕方なくなった私は、ついに近所の住人に話を聞くことにした。

住人の警告

この家が以前どんな人々に住まれていたのか、何か噂があるのではないかと考えたのだ。数軒先に住む高齢の女性に話しかけたところ、彼女は私の話を聞くと顔色を変えた。

「この家ね…昔から音がするって話があるのよ。でも、誰もその原因を見つけた人はいないの」。彼女のその一言に、背筋が凍る思いだった。私が感じていた音は、もしかするとこの家にまつわる何か古い秘密と関係しているのかもしれない。そう思うと、不安は恐怖に変わり、夜の静寂が一層恐ろしいものに感じられるようになった。

その夜、再び音が響き渡る中、私は布団をかぶり、何とかその音をやり過ごそうとした。

音の激化

だが、音は今まで以上に激しく、私に向けて何かを伝えようとしているかのように響き続けた。その音が何かの合図であるかのように、私の心は次第に恐怖に飲み込まれていった。

続く…

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