まとめトピックスでは、現在読みたいお話しのジャンルを募集しております。ぜひともお問合せよりご連絡ください。こちらから投稿

【怖い話|短編】昼下がりの訪問者

昼下がりの訪問者
目次

昼下がりの訪問者

それは、平日の昼下がり、オフィスでの出来事だった。田中さんは会議を終えて自分のデスクに戻り、少し遅めの昼食をとろうとしていた。窓から差し込む明るい日差しが、オフィス内を温かく照らしている。外の喧騒も遠くに感じられ、オフィスはどこか静寂に包まれていた。

平穏なオフィス

しかし、その日のオフィスには、いつもとは違う不穏な空気が漂っていた。田中さんはなぜか背後からじっと見られているような視線を感じ、何度か周りを確認したが、誰も自分を見ている様子はない。同僚たちはみんな、いつも通り各自の仕事に集中している。田中さんは「気のせいだろう」と自分に言い聞かせ、昼食を手に取った。

不安な気配

デスクに座り、サンドイッチを口に運びながら、田中さんは窓の外をぼんやりと眺めていた。すると、窓ガラスに何かが映り込んだ気がした。慌てて視線を戻したが、そこにはただの空とビルの風景しかなかった。「疲れてるのかな…」と考え直し、仕事に戻ることにした。

午後の仕事に取り掛かろうとしたその時、突然、田中さんのデスクの電話が鳴り響いた。普段、昼間にかかってくる電話は大抵外部の業者からだが、その日は違っていた。受話器を取ると、向こうからは何も聞こえない。ただの無言電話かと思い、切ろうとしたその瞬間、受話器の向こうからかすかな声が聞こえた。「見ているよ…」

謎の電話

その声は小さく、不気味な囁き声だった。田中さんは思わず手元の電話に目を凝らしたが、すぐに電話は切れてしまった。驚いて周囲を見渡したが、誰も電話をしている様子はなかったし、同僚たちは変わらずパソコンの画面に向かっていた。「気のせいかもしれない…」と田中さんは自分に言い聞かせ、再び仕事に集中しようとしたが、胸騒ぎが止まらなかった。

午後3時を過ぎ、オフィスの中が少しずつ静かになってくると、再び電話が鳴った。田中さんは先ほどの不気味な体験を思い出し、躊躇しながらも受話器を取った。今度は明確に聞こえた。「後ろを見て…」

その声は冷たく、鋭い。田中さんは恐怖に駆られながらも、ゆっくりと振り返った。そこには、昼間の明るさでは決して見ることのできない、暗く朽ち果てた姿の女性が立っていた。その顔は影に覆われ、髪は濡れたように垂れ下がり、目だけが異様に光を放っている。彼女の口元は微かに歪んで、笑っているようにも見えた。

田中さんはその場で硬直し、声も出せないまま、冷たい汗が背中を流れた。次の瞬間、女性が一歩近づいてきた。その瞬間、田中さんは本能的に叫び声を上げ、意識を失ってしまった。

訪問者の正体

目が覚めたとき、田中さんはオフィスの床に横たわっていた。誰もいない静まり返ったオフィスの中で、彼女が倒れていた場所には奇妙な冷気が残っていたという。同僚たちはすでに帰宅し、田中さん一人だけが取り残されていた。

翌日、田中さんは同僚に昨日起きたことを話したが、誰も信じてくれなかった。それどころか、「最近疲れてるんじゃない?」と笑われてしまった。しかし、田中さんはあの冷たい視線と囁き声を忘れることができなかった。それ以来、彼女は昼間でもオフィスで背後を気にするようになり、あの電話の主が誰なのか、いまだに知ることができないままでいる。

Feature

特集カテゴリー

昼下がりの訪問者

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次