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【怖い話|短編】夢魔

夢魔
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夢魔

ある夜、友人が異様な夢を見るようになったと告げてきた。夢の中には、決まって美しい女性が現れるという。彼女は夢の中で、静かに微笑み、いつも同じ場所に立っているのだという。その表情は、ただ美しいだけでなく、どこか不気味さも漂わせていた。しかし、友人は彼女にすっかり魅了され、夜ごと夢の中で彼女と過ごすことを楽しみにしていた。だが、その代償はすぐに現れた。

美しい夢の始まり

朝になると、彼の顔には疲労の色が濃く刻まれ、目の下には深いクマが浮かび上がっていた。最初のうちはただの寝不足かと思っていたが、日を追うごとにその変化は顕著になり、彼の体は次第に衰弱していった。体重は急激に落ち、肌の色は青白く、血の気が失せていくようだった。周囲は彼に休養を勧めたが、彼は頑なにそれを拒否し、逆に夜になると生気を取り戻すかのように夢の世界へと没入していった。

ある晩、私は彼の部屋を訪ねた。ドアを開けた瞬間、そこには異様な空気が漂っていた。普段は温かみのある部屋が、今ではどこか冷たく、重苦しい雰囲気に包まれていた。彼はベッドに横たわり、天井を無表情で見つめていた。彼の顔にはかつての明るさは一切なく、まるで生気を失ったかのように無感情な表情だった。窓から入り込む冷たい風が、薄暗い部屋の中を不気味に流れていた。

友人の衰弱

その時、彼の体が突然痙攣し始めた。目を大きく見開き、喉を絞るような音がかすかに聞こえてきた。何かが体内で起きているのを感じたが、私は何もできず、ただその様子を見守ることしかできなかった。彼の体は痙攣を繰り返し、次第にその動きは鈍くなり、最後には完全に止まった。異常な静寂が部屋を包み込んだ。

ふと、視線を彼の枕元に向けると、そこには黒い影のようなものが浮かんでいた。その影は徐々に形を成し、夢の中で彼が語っていた女性の姿が現れた。彼女は優雅に立ち、友人を見下ろしていた。冷たい微笑が彼女の唇に浮かび、彼の顔にそっと手を伸ばした。その瞬間、部屋の空気がさらに重くなり、彼の体は一瞬で痩せ細っていくのが見て取れた。骨と皮だけになった彼の体は、まるで生命を吸い取られるかのように徐々に変わり果てていった。

不気味な訪問者

その場に立ち尽くすしかなかった私は、彼女の視線を感じた。彼女はまるで、次に狙うのは私だと言わんばかりに冷たい目を向けてきた。瞬時に恐怖が体を貫き、後ずさりしながらその場から逃げ出した。

数日後、彼の死が確認されたが、医師たちはその死因を特定することができなかった。ただ、彼の顔には微笑が残されていた。それはまるで、彼が最後に見たものが何であったかを物語っているかのようだった。

運命の終わり

夢の中で彼が追いかけたその美しさの裏に、何が隠されていたのかは分からない。だが、彼女は今もどこかで、次の犠牲者を待ち続けているのかもしれない。夢の中で囁きながら。

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