龍神の悪夢
静かな漁村、波崎で暮らす少年、翔太は、14歳の誕生日を迎えた夜、奇妙な夢を見た。暗闇の中、巨大な龍が目を覚まし、深海を掻き乱す。龍の鱗は月光を反射し、禍々しい光を放っている。
龍の雄叫びと共に、大地が轟音を立てて揺れ、黒い津波が村を飲み込んでいく。必死に逃げ惑う人々の叫び声が、耳をつんざく。
目を覚ました翔太は、冷や汗でびっしょりだった。心臓が激しく鼓動し、夢の恐怖がまだ身体にこびりついているようだった。次の日、翔太は夢の内容を祖父の正宗に打ち明けた。話を聞いた正宗は、顔色を変え、神妙な面持ちでこう言った。「翔太、それはただの夢ではないかもしれん。龍は古来より地震の神とも言われている。」
正宗は古い書物を取り出し、ページをめくり始めた。そこには、日本各地の神話や伝説に、地震と龍が関係しているという記述が見つかった。ある地域では、龍が地中で暴れることで地震が起こると信じられていた。また、別の地域では、龍神が怒り狂うと津波が押し寄せると伝えられていた。
正宗は続けた。「翔太、お前の見た夢は、もしかしたら未来を予知するものかもしれない。いつ起こるのかはわからんが、大きな地震が起きる可能性がある。そして、その地震は、過去のどの地震よりも大きいものになるかもしれん。」
翔太は正宗の言葉に恐怖を感じた。しかし、同時に、夢で見た龍の警告を無駄にするわけにはいかないと思った。
次の日から、翔太は毎晩のように龍の夢を見るようになった。龍は何も言わないが、その存在感は日に日に増し、翔太の心に重くのしかかる。
龍の目は、まるで翔太の心の奥底まで見透かしているようで、翔太は次第に精神的に追い詰められていった。
ある夜、翔太は夢の中で龍の目に吸い込まれるような感覚を覚えた。次の瞬間、翔太は龍の視点で世界を見ていることに気づいた。龍は海中を猛スピードで泳ぎ、日本列島へと向かっている。翔太は、龍の巨大な体から伝わる怒りと憎悪を感じ、恐怖で震え上がった。
夢から覚めた翔太は、全身から脂汗を流していた。心臓は破裂しそうに激しく鼓動し、息をするのも苦しかった。翔太は、地震がすぐそばまで迫っていることを確信した。そして、一刻も早くこの恐怖を誰かに伝えなければと思った。
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