呪いと怨念
東北地方、深い山々に囲まれた小さな集落。この村には、古くからの伝統や風習が色濃く残っており、人々は自然と共に生きる暮らしを営んでいます。
村一番の美人と評判の若い女性、美津子。彼女は、村の青年団のリーダーである健太と恋に落ち、二人は将来を誓い合っていました。
しかし、二人の仲は、村の有力者である庄屋の息子、一郎によって引き裂かれます。一郎は、美津子の美貌に心を奪われ、彼女を自分のものにしようと画策しました。
一郎は、父親の権力を利用して、健太を村から追い出し、美津子を無理やり自分の妻にしようとしました。美津子は、健太への愛と一郎への憎しみを抱えながら、絶望の淵に立たされます。
そんな中、美津子は村の古老から、丑の刻参りの儀式について聞かされます。藁人形に憎い相手の名前を書き込み、丑の刻に神社の御神木に打ち付けると、相手を呪い殺すことができるという恐ろしい儀式です。
美津子は藁人形に一郎の名前を書き込み、毎晩丑の刻に神社へと向かいました。彼女は白いワンピースを身にまとい、顔には白いマスク、頭には黒い帽子を被り、手には懐中電灯を握りしめました。その姿は、まるで現代の幽霊のようでした。
美津子は、藁人形に五寸釘を打ち込みながら、一郎への恨みの言葉を呟きました。「一郎、私を苦しめた報いを受けろ。お前は必ず不幸になる。」
やがて、呪いは効力を発揮し始めました。一郎は原因不明の病に倒れ、みるみるうちに衰弱していきました。彼の家族もまた、次々と不幸に見舞われました。
しかし、呪いは同時に、美津子自身をも蝕んでいました。丑の刻参りを続けるうちに、彼女の顔色は青白く変わり、目はうつろになり、まるで生気を失ったかのようでした。
ある丑の刻、美津子はいつものように神社に向かいましたが、途中で力尽き、倒れてしまいました。そして、そのまま息を引き取ったのです。
美津子の死後、村では奇妙な噂が広まりました。丑の刻になると、白いワンピースを着た女の幽霊が神社に現れ、藁人形に釘を打ち付ける音が聞こえるというのです。
健太は、美津子の死を知り、深く悲しみました。彼は、美津子への愛を貫けなかったこと、彼女を不幸にしてしまったことを悔やみ、村を去りました。
一郎は、全てを失い、孤独な晩年を送りました。彼は、美津子への仕打ちを悔やみ、毎晩彼女への謝罪の言葉を呟きながら、息を引き取りました。
今でも丑の刻になると、神社から不気味な音が聞こえると言われています。それは、美津子の怨念が未だに消えず、一郎への呪いを続けている証なのかもしれません。
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