麻里子と彼女の友人たちは、大学の春休みを利用してキャンプに出かけた。彼らは自然を愛し、日常から離れて冒険を楽しむことに興味があった。目的地は地元で有名な美しい湖のそばにあるキャンプ場だった。しかし、キャンプ場に到着する前に立ち寄った酒屋で地元の人から「森に近づかないように」と警告された。
地元の人は厳しい顔つきで「森には昔から良くない噂があるんだ」と言ったが、彼らはそれを気にせず、森の奥深くにキャンプを設営した。
初日の夜、焚き火を囲んで話をしていると、突然奇妙な音が森の中から聞こえてきた。それはまるで誰かが囁いているかのような、低く不気味な音だった。「風のせいだろう」と誰かが言ったが、全員がその音を不安げに聞いていた。音は徐々に大きくなり、まるで彼らに何かを伝えようとしているように感じた。
その夜、麻里子は夢を見た。古びた小屋に閉じ込められている夢だった。小屋の窓から外を見ると、無数の目が彼女を見つめていた。その目は悲しげでありながら、どこか憎しみを帯びていた。麻里子は必死に逃げようとするが、足が重くて動けない。冷たい汗が彼女の額を伝った。
翌朝、友人たちに夢の話をすると、みんなも同じような夢を見たと言う。奇妙なことに、全員が小屋の中に閉じ込められており、外には同じような目が見つめていたという。彼らは一様にその目に対する強い不安を感じていた。
その日の午後、麻里子たちは森を散策することにした。彼らは夢の中で見た小屋の場所を探そうとした。歩き回るうちに、彼らは本当に夢に出てきた小屋に酷似した建物を発見した。古びた木造の小屋で、見るからに何年も放置されているようだった。
恐る恐る小屋の扉を開けると、内部には古い家具や埃まみれの書物が散らばっていた。彼らは中を探索し始め、一冊の日記を見つけた。日記には、ある家族がこの森に引っ越してきた経緯と、その後の恐怖体験が綴られていた。家族は次第に奇妙な音や幻覚に悩まされるようになり、最後のページには震える字で「逃げろ、彼らが来る」と書かれていた。
突然、小屋の外から囁き声が聞こえてきた。それは昨日の夜に聞いたのと同じ、不気味な音だった。全員が慌てて小屋を飛び出し、キャンプ場に戻ろうとした。しかし、森の中で道に迷い、同じ場所を何度も回っているように感じた。森の木々は次第に彼らを包み込み、逃げ場を失わせるかのようだった。
日が暮れ、彼らは再び小屋の前に立っていた。その時、森の中から無数の目が彼らを見つめているのを感じた。目は冷たく、彼らを見下ろすようだった。囁き声はますます大きくなり、彼らを包み込むようだった。声は彼らに何かを訴えているようで、その意味を理解しようとすると頭が割れそうな痛みが襲った。
最後に聞いたのは、友人たちの悲鳴と、麻里子自身の叫び声だった。翌朝、地元の人々が森に入って捜索を行ったが、彼らの姿は二度と見つからなかった。森の囁きは、今でもその場所で続いているという。そして、あの森に足を踏み入れる者は、皆同じように消えてしまうという噂が広まった。
地元の人々は今でもその森を避け、警告を無視する者たちに「森には入るな」と繰り返し告げる。森の深奥には、未だ解き明かされない秘密が眠っているのだ。
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