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【怖い話|短編】鳴かないカラス

鳴かないカラス
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鳴かないカラス

東京・大田区、京急蒲田駅前の喧騒から一歩入った路地裏に、築40年の古びたアパートがひっそりと佇んでいた。その三階の角部屋に住むOL、美咲は、最近、奇妙な出来事に悩まされていた。

彼女の部屋のベランダに、一羽のカラスが住み着いたのだ。

不吉なカラス

漆黒の羽根、鋭いくちばし、そして、底知れぬ闇をたたえた瞳。そのカラスは、決して鳴くことはなく、ただじっと美咲の部屋を見つめている。まるで、彼女の人生を覗き込んでいるかのように。

美咲は、そのカラスの視線に、言いようのない不安を感じていた。ある日、彼女は友人との電話で、「最近、カラスのせいで、なんだか悪いことが起こりそうで…」と漏らした。友人は笑い飛ばしたが、美咲の胸騒ぎは消えなかった。

そして、その不安は、残酷な現実となる。

2024年6月3日の午後、美咲は、いつものように仕事帰りに京急蒲田駅前のアーケード商店街を歩いていた。夕立が降り出し、人々は足早に家路を急いでいた。美咲も、傘を差して小走りになったその時、突然、頭上から何かが落ちてきた。それは、近くの建設現場から落下した鉄パイプだった。

悲劇の始まり

美咲は、鉄パイプの下敷きになり、意識を失った。病院に搬送されたが、まもなく息を引き取った。

美咲の死後、アパートの住人たちは、奇妙な現象に悩まされるようになった。

三階の住人は、夜中に誰かに見られているような感覚に襲われ、眠れなくなった。彼は、ベランダから外を覗くと、漆黒のカラスが闇に溶け込むように飛び去るのを目撃した。一階の住人は、原因不明の体調不良に悩まされ、病院を転々とするようになった。そして、二階の住人は、突如として発狂し、アパートの廊下で「カラスが来る!カラスが来る!」と叫びながら暴れ回った。

呪いの連鎖

これらの出来事は、全て、美咲の部屋のベランダに住み着いたカラスと関係があるように思われた。カラスは、美咲の無念の死を糧に、人間の負の感情を吸収し、悪意の集合体と化していたのだ。

カラスは、美咲の死に関わった人々を、一人ずつ呪い殺していく。工事現場の責任者、安全管理を怠った上司、そして、落下した鉄パイプを製造した工場の社長。彼らは皆、不可解な事故や病気で命を落とした。

そして、最後に残ったのは、美咲の恋人だった。彼は、美咲の死後、自責の念に駆られ、心を病んでいた。カラスは、彼の心の隙間につけ込み、絶望の淵へと突き落とす。

ある嵐の夜、彼は、アパートの屋上から身を投げた。彼の遺体の周りには、カラスの羽根が散乱していた。

終わらない悪夢

こうして、カラスの呪いは、終わりを迎えたかに見えた。しかし、カラスは、まだそこにいた。美咲の無念は、消えることなく、カラスの中に生き続けていたのだ。

カラスは、今もなお、アパートのベランダに住み着き、次の犠牲者を探している。

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